M3の人気はいまだに衰えない!
2024年8月15日〜17日にRMサザビーズがアメリカ・モントレーで開催したオークションにおいてBMW「M3 チェコット エディション」が出品されました。1973年から始めたモータースポーツで輝かしい成績を収めていたジョナサン・チェコットの活躍に応えて登場したのが、505台限定で生産されたM3 チェコット エディションです。
コンパクトなボディと魅力的なエクステリアデザイン
BMW「M3」といえば、今でも多くの人がイメージするのは、1985年に発表された初代M3ではないだろうか。当時のBMWモータースポーツ社(現在のBMW M社)が中心となり開発されたM3は、1984年から開始されたDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)への参戦を目的としたもの。
DTMのレギュレーションによれば、それに参加可能なカテゴリーは、年間に5000台以上の生産が義務づけられた4シーター以上のモデル、すなわちグループAの車両規定を満たしたもので、BMWモータースポーツはそのベースとして1982年に誕生したE30型「3シリーズ」を選択。さらにその戦闘力を高めることを決断した。
現在でもE30型M3が高い人気を誇るのは、コンパクトなボディと大胆にリニューアルされたボディのディテールに大きな理由がある。前後のフェンダーはトレッドの拡大を想定してさらにグラマラスな造形となり、リアには専用のスポイラーが装備されたほか、トランクリッドをハイデッキ化した。さらに注意深くリアセクションを見れば、リアウインドウの角度もエアロダイナミクスを意識して、オリジナルのE30型3シリーズから見直されているのが分かる。これらの対応策によって得られたCd値は0.33。それは十分な説得力を持つ数字だった。
M3のDTM初参戦は1987年のことだったが、初年度からM3はサーキットで圧倒的な強さを披露する。そのリザルトに後押しされるかのようにM3は市場で好調な販売を展開していく。M3自体もさらにその進化を目的に、エボリューション、エボリューションII、スポーツエボリューションへと進化を続けていくが、その中ではさまざまな特別仕様車も設定された。今回RMサザビーズがモントレー・オークションに持ち込んだ「チェコット エディション」もそのひとつである。
ジョナサン・チェコットの活躍に応えたモデル
チェコット、正確にはジョナサン・チェコットの名前は、レース・ファンにはお馴染みのものだろう。1973年にベネズエラ国内のモーターサイクル・チャンピオンシップを獲得したことを皮切りに、20歳までにさまざまなタイトルを獲得。最終的にはF1を含むトップカテゴリーで戦った経験を持つ彼は、M3のステアリングを握ってツーリングカーレースで成功を収め、BMWの名声を確固たるものにした立役者だったのだ。その活躍に応えて、BMWモータースポーツが1989年に企画・製作したのが「M3 チェコット エディション」だ。
オリジナルのM3に対してさまざまな改良が加えられたこのモデルで特筆すべきは、最高出力で200ps以上を発揮する2L直列4気筒(S14B23型)エンジンの搭載。シリンダーヘッドは、チェコット エディションに設定される外装色、マカオ・ブルー、ミサノ・レッド、ノガロ・シルバーに塗り分けられ、さらに大型のフロントスプリッターやリアウイング、16インチのBBS製メッシュホイールなどで外観の差別化も図られた。
出品車のチェコット エディションは、505台が生産されたモデルの中で363番目に出荷されたもの。走行距離は3万4621kmとわずかなもので、さらに2023年にはフェラーリのコンペティション・ビルダーであるミケロットによってメカニカル、そしてコスメティックのリファインが行われた。新車販売時からの書類ももちろん完全に保管されていることも高評価につながるのは間違いない。
15万ドル〜20万ドル(邦貨換算約2194万円〜2925万円)というエスティメート(予想落札価格)をRMサザビーズが掲げた1989年式のM3 チェコット エディション。落札価格はそのレンジをはるかに超える24万6400ドル(邦貨換算約3604万円)という数字だった。それはE30型M3のいまだに衰えぬ、いやヤングタイマーとして逆に盛り上がりつつある人気、そしてスペシャルモデルとしての希少性と感動的なコンディションが高く評価された結果だった。