イベントを通じて日本の秋を感じられる季節がやってきた!
名古屋の「チンクエチェント博物館」が所有するターコイズブルーのフィアット「500L」(1970年式)を、自動車ライターの嶋田智之氏が日々のアシとして長期レポートする「週刊チンクエチェント」。第46回は「秋を感じられる軽井沢フィアット・ピクニックの楽しさ」をお届けします。
秋に開催される「軽井沢フィアット・ピクニック」とは?
季節はもはや完璧な秋、である。年によってバラつきはあるけど、9月も後半に近づいた頃から朝晩の気温差が次第に激しくなって、ゴヨーショーのミギリより気温の乱高下に対応するのが苦手な体質である僕は思い切り風邪をひきやすくなるし、元気なときは元気なときで食べ物がやたらと美味くてついつい摂食過多になり天高く馬肥えてしまう状態になるしで、ロクなことがない。
にも関わらずこの季節がどうしても嫌いになれないのは──というより大好きなのは、日本がとても美しい国であることを実感できるからだ。新緑の季節もたしかに美しいのだけど、木々が色づき、遠くの山々が黄と橙と赤と茶のパッチワークへと日々変貌していくのを観るともなしに見ていると、何ともいえない穏やかな気持ちになれる。そしてその風景にうろこ雲やひつじ雲、すじ雲といった大空のスペクタクルが演出を加えたりすると、ああ、この国に生まれてよかったな、なんて思えてくるのだ。そうした日本ならではの麗しくも尊い光景の中をドライブしたりすると、ただそれだけで幸せな気持ちになれる。
……いや、あるのだ。そういうクルマのイベントが。チンクエチェントとフィアット、そして新旧イタリア車のためのイベントなのだけど、毎年この時期になると開催される風物詩のような恒例行事で、イタ車乗りの間ではよく知られている。
その名は「軽井沢フィアット・ピクニック」。そう、この季節がとりわけ美しい日本の中でも格別といえる風景を見せてくれる、長野県の軽井沢とその周辺の秋を堪能できるイベントなのだ。
制限速度に合わせてドライブすることが勝敗に最も近づける
「その周辺」という言葉から想像がついた人もいるだろうが、軽井沢フィアット・ピクニックは走るイベント。いや、スピードを競う類のモノじゃなくて、文字どおりクルマを使ったピクニックのようなドライブ・イベントだ。より具体的にいうなら、ドライブ・ラリーというかお楽しみラリーというか。つまり設定されたルートをコマ図を使って走り、法定速度から割り出された目隠しタイムとの時間差がいちばん少ないクルマ/ドライバー&パッセンジャーがいちばん偉い、というヤツだ。さらにフィアットに関するちょっとばかりマニアックなクイズがいくつか出され、それも順位の決定に加味される。
2024年も開催されることになっていてそれが第17回ということだから、ずいぶんと長く続いてるものである。おまけに参加したことがある人のほとんどが「また参加したい」とクチにするのは、のんびりと制限速度に合わせてドライブすることが勝敗に最も近づける方法であり、その速度で走るとドライバーもパッセンジャーも秋の軽井沢の風景をちゃんと目で楽しむことができる、という心地よい緩さがあること。それに集合場所でもあり開会式と閉会式などが行われるメイン会場、そしてルートの途中に設定されてるランチ会場では仲間とワイワイできるし、ツーリングのように仲間たちと連なって走ることもできるけど、クルマの中では同行者とプライベートな空間で親密な時間を過ごせる、ということ。参加者は一部の例外を除けばチンクエチェントかフィアット車かイタリア車。嗜好が同じ方向を向いてるうえにフィアット系のユーザーさんには穏やかでニコやかな人が多いから妙な諍いみたいなのはまったくないし、それでいて集まるクルマは色とりどりだったり想い想いのドレスアップやカスタマイズがほどこされていることが多くて目が楽しい。このイベントへの参加に引っ掛けて前泊か後泊をして、軽井沢周辺や会場への道すがらにある楽しげなところを観光して回ることだってできる。何ともいえずラヴ&ピースなイベントなのだ。
>>>フィアット&アバルトの専門誌「FIAT & ABARTH fan-BOOK」のvol.08を読みたい人はこちら(外部サイト)