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チンクエチェント初心者と「軽井沢フィアット・ピクニック」に参加! はたしてゴールに辿り着くことはできるのか……!?【週刊チンクエチェントVol.46】

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TEXT: 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)  PHOTO: 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)/チンクエチェント博物館(MUSEO 500)

チンクエチェントには縁のない人をあえてドライバーに選び参加!

こういうイベントを主催するのは、もちろんチンクエチェント博物館。彼らはチンクエチェント好き、フィアット好きがどういう人たちなのか、本当によくわかってるのだな、と思う。そして僕はといえば、ゴブジ号をお預かりすることが決まった日から、実はこのイベントに参加してみたいと考えてた。

ただし問題があった。僕は妻帯者じゃないし決まった恋人がいるわけでもない。ヤローの友達と一緒に参加するのは、何かちょっと負けた気がして悔しい。何に対して負けなのかはちっともわからないのだけど。

そこで僕が考え出したのは、この「週刊チンクエチェント」をはじめるキッカケをこしらえちゃった、当時は別の会社の別の媒体で編集長をやっていた西山嘉彦くんを犠牲にすることだった。西山くんに日頃は縁のないチンクエチェントというクルマを深く知って欲しいと思ってたところはあるし、媒体の編集長というのが「……なぜだ?」と疑問に感じる暇すらないくらい忙しいのは自分もたっぷり経験してきたから理解していて、そんな中で関連するフィールドを訪ねることになったら間違いなく黙って記事にするだろうからチンクエチェント博物館も喜んでくれるだろうし、何よりその昔は同じ出版社で仕事をしていた先輩にあたるヤカラみたいなヤツから誘われたら断りにくいだろう、と考えたからだ。われながら腹黒い男である。さすがにハメるようなカタチになっちゃうので──というかハメたのだな──かかる費用は黙って僕持ちとしたのは、ちょっとした罪滅ぼしのつもりだ。腹は黒いけどいいところもある男なのである。誰も言ってくれないから自分で言っておくけど。

ともあれ、2021年10月30日の朝。8時の受付開始時間を目指して軽井沢駅近くのホテルのロビーで西山くんと待ち合わせをして、駐車場へ出ると、ゴブジ号にはうっすらと霜が降りていた。フローズン・チンクエチェント、だ。

東京からの移動と同じく会場までは僕が運転して、ドライブ・ラリーの間は西山くんがドライバー。僕は過去にコマ図を見たことはあるしコマ図を使ったタイム・ラリーのゼロ・カー(=先導車のようなもの)のドライバーをつとめたことはあるが、コドライバーは初体験。今回のドライブ・ラリーで好成績を上げられるかどうかは、僕がコマ図をちゃんと理解できるかどうかにかかってる。

50年前のクルマを運転するなら誰でも最初は難儀する

会場に集まった本当に色とりどりのイタリア車に混ざってクルマを停め、旧知のフィアット・オーナーたちに声をかけてもらったり声をかけたりして開会前の時間を楽しんで、いつもの博物館イベントと違ってひとりの参加者として開会式に参加し、そしてスタート……という流れになったわけだけど、僕はといえばずいぶん長いこと触れてなかったコマ図というヤツの見方をすっかり忘れていて、参加していた友人夫妻に教えてもらったり、何度もコマ図を見返したり。落ち着かない時間を過ごしたうえでの出発だった。

西山くんはといえば、過去にチンクエチェントを走らせたのはチョイ乗り程度。四方八方をワインディングロードに囲まれてるような土地でいきなり走りはじめなきゃならないのだから、やっぱり少し緊張気味っぽい感じ。

僕はコマ図にすぐ慣れたので──チンクエチェント博物館が初めての人にでも理解できるようなやさしいコマ図を作ってくれたからだ──気楽に助手席に座ってたのだけど、最初のうち、西山くんはチンクエチェントに難儀していた様子。

まぁそりゃそうだよな、と思う。誰だっていきなり50年前のクルマを動かすことになったら、間違いなくそうなるはず。

西山くんの名誉のために言っておくけれど、彼はレース経験者だしタイム・ラリーだって何度も経験してるし、愛車はBMWのE30 M3だし、バリバリの新車系自動車雑紙の編集者をつとめた後に、スーパーカー雑誌の編集長だって体験してる。一緒に仕事をしてきて、彼のドライビングに不安を感じたことはない。それでも、やっぱり最初は難儀する。そういうものなのだ。

やっぱり「プロと一緒の仕事」は気持ちがいい!

チンクエチェントはたったの18psだから、登り坂では露骨に失速する。設計の旧い足まわりが司るコーナリングには独特の動きがある。おまけにゴブジ号のトランスミッションは、シンクロ機構が一応ついてはいるのだけど、デリケートにタイミングを見計らうようにエンゲージしてやらないとギャッ! とかガッ! とかギア鳴りを起こす。ただ古いだけじゃなくて車種に特有の、そして個体特有の癖があるわけで、綺麗に走らせるにはそうした諸々に合わせたドライビングをする必要がある。そして、実はそこを攻略していくのが、クルマの言うことを聞くフリをしながらクルマに言うことを聞かせて走るのが、また楽しかったりするのだ。

西山くんはさすがだった。最初のうちはコーナーでわずかに揺り返しをもらったりギアを鳴らしたりしていたところもあったけど、ランチを挟んで午後の走行のときにふと気づいたら、揺り返しはゼロ、ギアもまったく鳴らさない。プロと一緒の仕事──いや、これは僕にとっては遊びだったけど──っていうのは、これだから気持ちいい。

その道中の様子は写真とキャプションを見ていただくのがいいかと思うのだけど、100km少々のコースを走ったタイム・ラリーの結果は、3時間57分の設定タイムに対して4時間28分。フィアットに関するクイズはいうまでもなく全問正解だったけど、それでも表彰にはまったくかすりもしない成績だった。笑うしかない。というか、成績ウンヌンは関係なしに不思議と楽しかったから、自然と笑っちゃってたのだけど。

そして何より僕としては、西山くんがチンクエチェントの世界を楽しんでくれたことが嬉しかった。勝手に抜粋みたいなことをしちゃうけど、後日、イベントをレポートした記事には、こんなようなことが記されてたのだ。

「天気もよかったため、ルーフを開け放ち、三角窓から入る風も心地よく〜」

「〜パワーをすべて出し切っても失速してしまうようなシーンもあって、使い切れないパワーを持て余すクルマとは違う発見が数多くあった」

「免許取り立てだった大学生の頃、手に入れたばかりのクルマで、ただシフトアップやシフトダウンするだけでも楽しかった頃が思い出された」

「〜非力でもまったく問題ないことがよくわかった。むしろ、非力だからこそ楽しめた部分と気付きが多かった1日だったほど」

「クラシックカーのエントリー車はいろいろあるが、ヌォーヴァ500はサイズ感といい愛らしいルックスといい、これから趣味で増車したいという人にはまさにうってつけだ」

……しめしめ、である。西山くんも楽しんでくれたのだ。チンクエチェントの魅力を味わってくれたのだ。

その後、西山くんは交通タイムス社へと移籍し、現在の立場に収まったわけだが、またしても「週刊チンクエチェント、AMWでやりません?」と誘ってくれたのは、あのときの記憶が決め手になったのかな、なんて思ってる。

もうじき、軽井沢フィアット・ピクニックの開催日がやってくる。今年も出たいものだな、なんて思ってる。……のだけど、冒頭に記したように気温の乱高下にやられてダウンしたり起き上がったりまたダウンしたりで仕事にめちゃめちゃ遅れがでちゃったりもしてるから、無理かなぁ……。でも、出たいなぁ……。出るとしたら今回は誰をハメるかなぁ……。でも、無理かなぁ……。

■協力:チンクエチェント博物館
https://museo500.com

■「週刊チンクエチェント」連載記事一覧はこちら

>>>フィアット&アバルトの専門誌「FIAT & ABARTH fan-BOOK」のvol.08を読みたい人はこちら(外部サイト)

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  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 嶋田智之(SHIMADA Tomoyuki)
  • 『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー雑誌の『ROSSO』やフェラーリ専門誌『Scuderia』の総編集長を歴任した後に独立。クルマとヒトを柱に据え、2011年からフリーランスのライター、エディターとして活動を開始。自動車専門誌、一般誌、Webなどに寄稿するとともに、イベントやラジオ番組などではトークのゲストとして、クルマの楽しさを、ときにマニアックに、ときに解りやすく語る。走らせたことのある車種の多さでは自動車メディア業界でも屈指の存在であり、また欧州を中心とした海外取材の経験も豊富。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
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