夫婦でアルトを駆りレースを楽しむ
2022年からスタートした「東北660 HA36カップ」は、軽自動車のレース「東北660」シリーズで初めてとなる、スズキ「アルト」のワンメイクレース。クラスはトランスミッション形式によって3つに分けられ、最大の目玉といえるのが、2ペダルMT「AGS」だけの2クラスです。AT限定免許で参戦できるハードルの低さとMTと遜色ない速さにハマる人が後を絶たず、今まで軽自動車のモータースポーツと縁がなかったドライバーのエントリーも増えています。そのひとりである、神奈川県のプロショップ「ベアーズ・ファクトリー」を率いる小熊忠之さんを紹介します。
ドリフトとの違いに当初は戸惑った
主な業務としては中~大排気量の日産車を取り扱うことが多く、ドライバーとして積み重ねた経験もドリフトが主だったという、「ベアーズ・ファクトリー」小熊忠之さん。初年度から参戦していた知人の誘いでHA36型スズキ「アルト」のレースマシンを製作し、本人は同じ車両規定を採用する「東北660選手権」の4クラスに、「HA36カップ」は奥様の小熊聖子さんが参戦と、夫婦でレースを楽しんでいる。
ドリフトでは大会で輝かしい実績を持つ小熊さんだが、それがゆえに最初はグリップとの違いに苦しんだという。ドライビングをはじめ足まわりやタイヤのセッティング、そして走りの組み立て方まで何もかも違っており、わずか50ps程度のローパワー車もほぼ経験がなかった。
しかしベアーズ・ファクトリーを訪れるユーザーはグリップ派も多く、セッティングや走りの基本は十分すぎるほどわかっていた。さらに、東北660シリーズは「みんなで一緒に速くなろう」という空気感のため、1年も経たないうちにマシンの完成度が高まり、すでに4クラスで3位の表彰台も獲得している。2024年8月に開催された東北660選手権の第3戦では惜しくもリタイヤを喫したが、その前までは4クラスでランキング2位(同ポイントが3名)だった。
こだわったオリジナル車高調が勝利に貢献
チューニングのポイントは足まわり。以前は大手メーカーの製品を使っていたもののフィーリングが合わず、悩んだ結果オリジナル車高調を製作することになったという。とはいっても一般ユーザーに手が届かないような高価格ではなく、10数万円と安価なうえ、ストロークのスピードも細かく設定できる。参戦した当初は苦しんでいたリアのセッティングに関しても、オリジナル車高調の完成でかなりの進化を遂げたとのことだ。
また第3戦からはホイールをレイズ「ボルクレーシングCE28」に変更。スポーツランドSUGOの車検場で車重を計測したところ、ほかは何も変えていないにもかかわらず8kgの軽量化を達成し、2クラスで2番目に軽くなり約1秒のタイムアップに繋がった。
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最後に東北660以外の活動を紹介しておこう。ベアーズ・ファクトリーはC35型日産「ローレル」のデモカーを所有し、毎年3月5日に「35ローレルミーティング」を開催している。近年は栃木県の日光サーキットを会場としており、C35ローレルが主役ながら他車種のクラスもあり、ドリフトだけではなく置き系のユーザーも大歓迎だ。2025年の詳細も年内には発表されるはずなので、気になる人はウェブサイトをチェックしてほしい。