スバル「360」の後継モデルとして1969年に登場した「R-2」
愛らしいルックスの小さなクルマは、スバル「360」の兄弟車として1969年8月に発売された「R-2」。新しい時代のミニ・セダンとして開発されたR-2は、発売1カ月で驚くことに2万6000台受注という記録を樹立し、当時マイカーを求める人たちに圧倒的な支持を得ました。今回は、R-2乗りの石原圭吾さんに話をお聞きしました。
駆動システムはRR方式を採用
スバル「R-2」のボディは軽量で室内スペースが広く、ねじれ剛性の高いモノコックボディを採用。これは、かつての中島飛行機、富士重工が航空機技術を生かしてスバル「360」に採用した構造をより発展させ、合理的な面構成を達成できるように設計された。
メカニズムについては、搭載エンジンが空冷2サイクル直列2気筒360ccで、最高出力30ps/6500rpm、最大トルク3.7kgm/5500rpmをマーク。トランスミッションはフルシンクロ4速で、駆動システムがRR方式なのが特徴だ。R-2のRRレイアウトは当時の軽自動車のサイズ制限の中で、スペース配分と駆動効率からミニカーに最も有利なレイアウトとされ、居住性、性能ともに軽乗用車の中でも群を抜く性能を誇った。
この駆動式にともない走行安定性を高めるべく、ステアリングシステムやサスペンションシステムが大幅に見直された。その結果、サスペンションはセミ・トレーリングアーム式、ステアリングにはラック&ピニオンを採用。前後重量配分のバランス化を図りながらも軽くなりすぎな傾向のフロントを車輪の回転軸(キングピン)の位置を考えることで、据え切り、低速時にはステアリング操作をあえて軽くし、高速時には操舵力がしっかり伝わる安定感を引き出すことに成功した。
コンディション抜群のR-2の持ち主は……
ここで紹介するスバルR-2は、ほぼノーマル状態を保つ貴重な1台だ。車体の状態はとても良く、フェンダー、バンパーなどの腐食も見られない。きっとオーナーは当時を懐かしむ方が大切に乗っているクルマなのだろう……なんて勝手に思っていたが、いざ取材をしてみると現れたオーナーはとても若い。一瞬、持ち主の息子さんかと勘違いしてしまったが、オーナーは兵庫県姫路市在住、弱冠24歳の石原圭吾さんだ。
愛車が1969年式で、オーナーである石原さんの生まれた年が2000年。なぜ55年前に発売されたR-2に興味を持ったのかを聞いてみた。
「じつは中学生の頃から新しいクルマにはあまり興味がなく、好みが旧車に偏ってしまいました。18歳で普通免許取得後、ホンダ Zが良いなと思って探していましたが、たまたま見つけた旧車専門店に置かれていたR-2を見て、ルックスが良いことから購入しました。足車としてスズキ スイフトスポーツを所有していますが、完全に趣味を楽しむクルマとしてR-2を増車したのです」
オーナーが語る旧車の醍醐味
このクルマを購入したのは今から4年ほど前。すでにレストア済みだったため、状態キープを心がけてイベントなどに参加してはメンテナンスを楽しむカーライフを過ごしている。新たに自分で購入して装着させたパーツはマッドガードとメッキミラーとステアリングとのことだった。
普段はスイフトスポーツを使っているが、面白さは圧倒的にR-2だという石原さん。
「今どきのクルマと違って、電子制御されないアナログ感がたまらなく魅力的で、このルックスもお気に入りなんです。R-2は決して速くは走れないけれど、速さを求めるクルマではないのでいいのです。旧車はそういう目線で乗るのではなく、ドライブする喜びを感じながら操る乗り物。多少の不便は気にしません。それもひっくるめて楽しむことが大切です」
と、この若さにして旧車乗りとしての悟りを開いていた。
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