NDロードスター9年目にして最大の大幅商品改良を受けた現行モデルに試乗
2024年1月発売分から大幅な商品改良を受けたマツダND型「ロードスター」。2015年から続くNDの歴史の中でも、最も内容の多い改良となっています。2代目NB型ロードスターを愛車にし、NDロードスターを借りて「ロードスターカップ」レースに出場している20代自動車ライターの筆者は、ずっと興味津々でした。ようやく実車を借りることができたので、さまざまなシチュエーションで試乗してみました。
ダイナミクス性能から快適装備まで全方位的にアップデート
今回のND型マツダ「ロードスター」の大幅商品改良の内容を、あらためて簡単に振り返ってみましょう。性能面で言えばエンジンのパワーアップ(3kW/4ps)、減速側の差動制限力が強まった「アシンメトリックLSD」(ロードスター「S」を除くMT車のみ)、電動パワーステアリングのフィーリング向上、サーキット走行に最適化した制御のDSCトラック(MT車のみ)などです。
そして、見た目の部分で言えばヘッドライトとテールランプのデザインが変更されたほか、ホイールのデザインも変わっています。
また、快適装備も進化。高速道路での長距離ドライブ時の疲労感を軽減してくれるマツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(MRCC/一部グレードを除く)や8.8インチセンターディスプレイの採用などにより、装備的にも現代の最新モデルに劣らない内容となりました。
いくつかあるグレードの中から、今回お借りしたのは「S スペシャルパッケージ」。中間グレードに位置していて、アシンメトリックLSDが標準装備され、オプションでMRCCの選択が可能となっています。今回の大型改良のツボを押さえているグレードです。
街乗りも長距離ドライブも楽しくラクに!
新しくなったロードスターを受け取り、運転を始めてすぐに気が付くのがパワーステアリングの変化です。以前よりもフィーリングに剛性感があり、とくにセンター付近でのしっかり感に磨きがかかりました。「街乗りでも楽しい」と言われることが多いロードスターですが、街乗りでの楽しさに関しては、新型でさらに進化した部分だと確実に感じられるポイントです。
高速道路に乗るとMRCCの恩恵を受けることが出来ます。MTであるためクラッチを切っている間は作動してくれませんが、シフトチェンジをした後は再び何も操作する必要がなく、設定した車速と車間距離に合わせてくれます。長距離ドライブは、これまでに比べてグッとラクになりました。
ワインディングでもFRスポーツカーとして正常進化
そしてロードスター乗りとして最も気になるフィールドであるワインディングへ。ここでは、アシンメトリックLSDによる変化を実感することができました。とくに感じたのがリアタイヤのインフォメーションが増えたということ。LSDの減速側の差動が大きくなったことで、ターンインから立ち上がり加速に至るまで、コーナー全域でリアタイヤからの動きが感じ取りやすくなった印象です。
また、このリアタイヤからのインフォメーションが増えたということは、進化したパワステとの相性がいいということにも気づかされました。フィーリング的な剛性「感」で言えば前も後ろも増えている印象ですが、フロントは進化したパワーステアリングで、リアはアシンメトリックLSDで、その剛性感がアップしている様子。2つの進化ポイントがあるからこそ、成り立っているバランスだとも感じました。
このワインディングで感じた、剛性感とリアタイヤからのインフォメーションのアップという2点の進化は、FRスポーツカーとして正統的な、あるべき進化だと思わされました。
マツダ ロードスターとしてはヒラヒラ感が減ったかも?
ただ、「マツダ ロードスター」と考えると、少し疑問が残らないでもありません。ロードスターの売りのひとつがヒラヒラ感のあるハンドリングです。パワーステアリングとアシンメトリックLSDで全体的に「カチッ」としたフィーリングに仕上がった新型ロードスターは、FRスポーツとしては望ましい進化ですが、ロードスターの歴史を踏まえて考えると、手放しで評価していいのかどうか、悩ましい進化です。
とくにアシンメトリックLSDは、ターンインで感じられるロードスター特有のシャープなノーズの入りをスポイルしている雰囲気で、歴代のロードスターファンからすると好みが分かれるところだと思います。
筆者個人の好みとしては、「サーキットでの速さや楽しさを求めるなら新型、ストリートでの楽しさを求めるなら改良前」といったところでしょうか。
とはいえ、そんな風に乗り味にブランドがある日本車なんて他にないだろうなと、ロードスターの偉大さに改めて気がつかされました。アシンメトリックLSDが装備されていないグレードである「S」も用意されているので、乗り味の好みによって選ぶのもよさそうです。