ロールス・ロイスの歴史に残る名車を紹介
ロールス・ロイスは創業120周年を迎える2024年、ブランドを語るうえで重要な人物やモデルにフォーカスを当てて紹介しています。今回紹介するのは1955年に登場した「シルバークラウド」です。このモデルはATやパワーステアリングなど現代車には当たり前になっている装備が初めて標準化されました。「ファントムVII」のデザインとコンセプトの礎となったシルバークラウドを紹介します。
ジョン・ブラッチリー氏がデザインを手がける
1955年頃、自動車業界は急速に変化していた。1949年に発表された「シルバードーン」は大成功を収めたが、ロールス・ロイスの設計チームは1947年の時点である問題に気づいていた。そこで登場したのが「シルバークラウド」である。
アイヴァン・エヴァーデン氏が率いるロールス・ロイスのスタイリング部門は、1940年に経験豊富なデザイナー、ジョン・ブラッチリー氏を採用した。ブラッチリー氏はロンドンの有名なコーチビルダー、ガーニー&ナッティング社の出身である。戦時中、ブラッチリー氏は心雑音があったためノッティンガムシャーのハックノールにある航空設計本部で働き、ハリケーンやスピットファイア戦闘機に使われるマーリン・エンジンのカウリングを担当していた。
7回の試作を経てシルバークラウドが誕生
ロールス・ロイスは1939年から1945年までの間、航空エンジンの製造に専念するために自動車生産を一時停止していたが、新チームは1949年にシルバードーンを発表して大成功を収めた。その後、1951年に新設されたチーフ・スタイリングエンジニアのポジションに任命されたブラッチリー氏は、同年コードネーム「サイアム」と呼ばれる1/4スケールのモデルを設計した。それから7回の試作を経て、より大きなフルスケールのシルバークラウドが誕生することとなる。
独創的なフルワイド・ボディデザインは、シャシーや機械部品の配置も工夫され、キャビンのサイズを大幅に拡大することを可能にした。その結果、より豪華で広々としたシートとトリムデザインが実現した。
新モデルで拡大したのはキャビンだけではなかった。ホイールベースは7.6cm延長され、1957年のエクステンデッド・ホイールベース仕様ではさらに10.2cm延長された。しかし、この拡大でさえエンジンルームを完全に占有することはなく、いつの日かV8エンジンを搭載できるよう、意図的にさらに大きく設計されていたという。