生まれて初めて左ハンドルを運転……
この企画を通してさまざまな旧車に試乗してきた佐々木さん。レースでもレースデビューを果たしたVITA以外のマシンに乗る機会も増えてきているそうだが、じつはこの日が「初めて左ハンドルを運転する日」となった。
「そっか! 左ハンドル! 輸入車だから当然と言えば当然ですね……乗れるかな……」
そう言いながら佐々木さんはクラッチミートをして、ジュリエッタ スパイダーを発進させた。走り始めは少し戸惑っている様子であった。
「うぉぉ! クラッチが重たい! あと下はトルクが薄くて発進が難しい! それとオルガンペダルの形状が独特で、上に少し持ち上がりながら動くペダルの動きが慣れないですね……。それとブレーキも重たくて、初期は効きづらくて奥で効くので慣れが必要ですね」
なお、「奥で効く」と佐々木さんがコメントしていたブレーキ、試乗後に130コレクションで聞いてみたところ彼女のコメントは正解で、今回装着されていたパッドの特性的に奥で効くタイプとのこと。キャリパーはワンオフ品でローターはCMC(セラミック基複合材料)製、サスペンションもワンオフ品の「Function.com」で、エンドレススペシャルな足まわりとなっている。
「足まわりは想像以上にしっかりしている感じです! 不安定な雰囲気がないし、ハンドルが取られない、どこにも飛んでいかないって感じです。それなのに乗り心地がしっとりとしているのが驚きです。でもステアリングはリニアじゃないというか、インフォメーションが遅れてくる感じで、少し不安感がありますね」
思えばこの時代のステアリング機構は現代の主流のラック&ピニオンではなく、ボールジョイント式。佐々木さんがステアリングフィールに不安感を覚えるのも無理はないだろう。
「高回転域が楽しいエンジンフィーリングです」
少し時間が経過して慣れてくると、佐々木さんはアルファ ロメオらしさを楽しんでいる様子だった。
「4500rpmから上がパーンと気持ちよく回る感じですね! イタリア車らしい? のかな? そんな軽快で乾いたサウンドで上が回ってくれるので、高回転域がとても楽しいエンジンフィーリングです」
よく、アルファ ロメオを始めとしたイタリア車は、そのフィーリングが「官能的」と言われることが多いが、佐々木さんもそれを体感したのだろうか。
なお、最初戸惑っていた左ハンドルだが、「シフトが右側ってことはVITAと同じですね!」とすっかり慣れた様子であった。現在KYOJO CUPで使われているVITAはフォーミュラカーと同じく、ドライバーをセンターに置いて右手でシフト操作を行うというレイアウト。そんなマシンでレースしている佐々木さんが、左ハンドルに慣れるか否かの心配は、する必要がなかったということだろう。
佐々木藍咲選手のアルファ ロメオ ジュリエッタ スパイダー 〇と×
好きなポイントは?
「手書き感のあるメーターがオシャレで可愛い! あと、メーターに書かれた文字もイタリア語……? なんですかね?」(編集部注:イタリア語です)
マイナスポイントはある?
「重たいけどリニアじゃないステアリングフィールかな」
佐々木藍咲選手とは
佐々木藍咲さんは富士スピードウェイで開催されている女性だけのモータースポーツカテゴリー「KYOJO CUP」で2023年シーズンに4輪レースデビューした、2004年生まれの若手女性レーシングドライバー。2024年10月6日のRd5では予選7位、決勝7位に。上位陣はフォーミュラでのレース経験もある強豪揃いなので、成長を感じさせるシーズンとなっている。また、今シーズンはGR86/BRZ Cupクラブマンシリーズにもスポット参戦。7月13日~14日に開催された富士ラウンドでは初参戦ながら予選44位、決勝37位で無事に完走するとともに、ルーキー賞を受賞した。次戦は11月23日(土)~24日(日)にモビリティリゾートもてぎでGR86/BRZ CUP第7戦に出走予定となっている。
レーシングドライバーとして活動しながら、普段はフォーミュラドリフトジャパンを運営する会社である「MSC株式会社」に勤めていて、公私ともにクルマ漬けの生活を送っている。
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