充電回数よりもロマンを感じながら…EVで行く国道4号走破の旅
国道4号といえば、全国津々浦々に繋がる国道のなかでも最長距離を誇る国道です。2023年6月にスバルのBEV「ソルテラ」を購入して仕事の足として愛用しているカメラマンの雪岡直樹氏が、そんな国道4号を東京・日本橋から青森までひたすら走ってきました。途中には充電器の少ないエリアもあり注意が必要となる、実走765kmの全線走破レポートをお届けします。
スバルのBEV「ソルテラ」を仕事の相棒とするカメラマン
今回走行した車両は筆者のマイカーでもあるスバル「ソルテラ ET-HS AWD」だ。AMWでは何回も長距離レポートを掲載しているので、ご存知の方も多いだろう。
トヨタとスバルで共同開発されたソルテラはトヨタ「bZ4X」と兄弟車となり、全長4690mm×全幅1860×全高1650mmのミドルサイズSUV。完全電動車ということでバッテリーはリチウムイオン電池71.4kWhを搭載する。
FFタイプは前輪に最大出力150kW/最大トルク266Nmのモーターを搭載し、AWDモデルでは最大出力80kW/最大トルク169Nmのモーターを前後輪にそれぞれ搭載する。カタログ上の航続距離はET-SS FWDで567km、AWDモデルで542km、ET-HSはAWDモデルのみで487km走行可能となっている。この走行可能距離は車両重量や装備品、エアコンのON/OFF、走行条件などで変動していくので、あくまでも目安だ。
今回使用するモデルはET-HS AWDで、エアコンはつねにONで24℃前後で固定するが、夏場の旅だったこともあり、風量はAUTOで暑い時にはかなりの風量でエアコンが作動していた。
同じ区間なら高速より下道の方が充電回数は少ない!?
今までに宮城県の仙台までは、高速道路や国道4号で何度もソルテラで走破している。
東北自動車道を使って東京から仙台まで行こうとする場合、充電ポイントはSA/PAに限られ、那須高原SA付近でバッテリーを使いきる。那須高原SAの充電器は50kWなので、使い切ってしまうと多くの充電は期待できない。それでも充電して次は90kWの高速充電器がある安達太良SAを目指す。そこで充電することで仙台まで走行可能となり、東京から仙台までは2回の充電が必要になるわけだ。
一方の国道4号では、道の駅やディーラー、ガソリンスタンド、コンビニやスーパーなどに設置されている充電器を使うことが可能だ。東京から走っていくと、福島県の鏡石町にあるコンビニに90kWの充電器が設置されているため、そこで1回充電できると、うまく走ればその1回の充電で仙台に到着できる。
つまり東京から仙台まで、高速では2回、国道では1回は最低限充電が必要となる。到着するだけなら、国道は1回充電で行けてしまうことを考えれば、国道の方が電費が良いとなる。高速道路ではバッテリーに溜まっている電気をひたすら使い続けてしまい、電気を回収できない。国道では信号や坂道で回生ブレーキを使い、わずかな量かもしれないが電気を回収できる。劇的には回収できなくても随時、少しずつ電気を回収できれば、総量としては減っていかない。この点が高速と国道の違いだ。
前置きが長くなってしまったが、国道を使っていけば、それほど充電しなくても国道4号を走破できるのではないか? という、BEVオーナーとして気になっていた壮大な実験を行うために、国道4号を青森まで走破してみることにした。
福島・鏡石町のコンビニの90kW充電器が旅のカギ!
夏真っ盛りの8月終盤のお昼12時に東京・日本橋を出発した。バッテリー残量は81%からのスタートだ。お昼頃とはいえ都心部は渋滞もひどく、埼玉県との県境まで1時間以上かかってしまった。
その後は北関東のアウトバーンとして名高い国道4号バイパスに入り、快適な移動をしていく。信号が適度な距離にあり適宜回生ブレーキで停止することで、電気をわずかだが回収できている。
宇都宮に入った頃に北関東特有の局地的雷雨に見舞われ、道路が渋滞するのとともに、エアコン、ヘッドライト、ワイパーと電力を使っていく。ヘッドライトなどはLEDになっており省電力化されているが、ワイパーはそれなりに電気を消費していきそうだ。
宇都宮を過ぎてさくら市で休憩を取る。122km走行して、バッテリー残量は49%となった。
その後、那須を抜けて福島県に入っていく。国道4号をひたすら仙台に向けて走っていくとディーラーや道の駅などで充電できるポイントは多くあるが、どれも40~50kW級の充電器だ。
この充電器しかなければ仕方ないが、鏡石町のコンビニに90kWの充電器があるのを知っているので、なるべくならそこで大量に充電したい。仮に30分止まったとしてもコンビニに併設されているので、トイレや飲み物、食料の調達には困らないのも良い点だ。鏡石町のコンビニ到着時で203km走行しバッテリー残量は27%。
ここで残量73%まで充電できたのでそのまま仙台市まで行けるのだが、今回はその先に行くので、仙台市内を少し離れた、仙台市泉区にあるガソリンスタンドで充電した。ここまでで359km、バッテリー残量は41%だ。昨今はガソリンスタンドでも充電できるスポットが増えているため、空気圧チェックや洗車ついでに充電できるのも良いことだ。エンジン車と同じような活用ができる。ここの充電器は50kWなのだが77%まで戻すことができた。
岩手からは充電器のないエリアが続くので要注意
その後深夜の国道4号をひたすら走り、平泉の中尊寺の近くを通過し、花巻市で仮眠を取ることにした。コンビニの片隅で仮眠をとったが、よくよく調べると少し先の道の駅 石鳥谷というところに充電器&コンビニが併設されているようだ。こちらで仮眠すれば充電やコンビニ利用など効率的ということで、コンビニから道の駅 石鳥谷へ移動し充電を行う。この時点で528km走行、バッテリー残量は35%から、道の駅の50kW充電器で70%まで復活した。
再び昼間の国道4号を北上を続ける。このエリアは片側1車線の国道のため、それほど速度域が高いわけでもなく、ただひたすらに移動していくという時間が流れる。盛岡近郊はさすがに大きな道になるが、それなりに交通量もあり速度は上がらない。
盛岡をすぎると大都市と呼べるほどの都市は少なくなっていく。ということは、充電スポットも減っていく傾向になる。道の駅やディーラーが頼りになるが、それすらもないエリアが結構続くところもある。そういう充電器なしエリアで電欠にならないように、それまでの電費や走行可能距離などを考慮して、早めに充電しておくことも大事かもしれない。
道の駅 三戸でも休憩をしたが、ここでは充電をしなかった。この判断がのちにギリギリの残バッテリー量になるかもとは正直、考えていなかったのだ。この時点で656km走行しバッテリー残量が42%だったので、充電しておけばよかった。
765キロを走りきって、電費は優秀な7.3km/kWh!
その後、道の駅 十和田に寄ったら、ここの充電器は故障のため使えなかった。複数の充電アプリで確認しても故障の情報は上がっていない。この故障はなかなかの痛手だ。この時点で走行685km、バッテリー残量34%。
その後かなりヒヤヒヤしながら粘りの走行を続け、ようやく国道4号終点の青森県庁に到着した時点では、走行距離765kmでバッテリー残量はわずか16%となっていた。
日本橋を昼の12時に出発して、終点の青森県庁に翌日13時到着なので、25時間かかってしまった計算だ。ここまでで充電したのは3回だ。1回30分で3回なので充電時間だけでは1時間30分使ったことになる。そのほか仮眠や日帰り温泉に入浴、休憩なども含めての25時間という結果だ。時間はかかってしまうが、この距離を充電3回で行けたのならかなり好成績だったのではないかと思う。
青森市が意外に充電器がなく、少し離れた日産ディーラーで充電を行う。50kWの充電器で16%から充電を行ったが意外に入らず43%までしか充電できなかった。お昼ご飯を食べている間に充電を行ったので時間的ロスはあまりない。充電は最後の青森市内も含めて4回で、電費は7.3km/kWhとなった。
EVでもストレスを感じず、静かに快適に旅ができる時代に
東北地方は都市部を離れてしまうと充電器のインフラ問題は起きてしまうが、よほどの山中に入らない限りはどこかに充電器は必ずあるので、そこで充電を行えば問題はないだろう。また、300km程度までなら余裕を持って走行ができる、
とはいえ充電計画はある程度立てた方が安心なのは言うまでもない。悠久の奥州に思いを馳せながらEVで走るのも悪くない。
じつはこの青森まで走ったたあと、八戸から北海道の苫小牧に渡り、十勝スピードウェイまで行き、さらに帰りは札幌を経由し、再び苫小牧から八戸に渡り帰京してきている。この北海道編に関しては、交通タイムス社刊の『SUBARU MAGAZINE vol.54』でレポートを行っているのでそちらを見ていただきたい。
EVでも長距離移動はもちろんできる。エンジンの振動やマフラーの音などがない分、静かに快適に移動できる。都市間移動などに最適なモビリティということを改めて実感した。