デイトナのオルタナティブチョイス? フェラーリ 365GTC/4
国際クラシックカーマーケットにおいても最高の「華」であるフェラーリながら、すべてのモデルが目をみはるような高価格で取り引きされているわけでもありません。RMサザビーズ北米本社が8月15日~17日にアメリカ・モントレー市内で開いた「Monterey 2024」オークションでは、正真正銘のクラシックV12モデルでありつつも、比較的リーズナブルな価格帯で推移している「365GTC/4」が出品されていました。今回はその車両解説と、最新のオークション結果についてお伝えします。
フェラーリ4座席モデルの異端? 365GTC/4とは
フェラーリ「365GTC/4」は、英国の巨大客船に擬えた「クイーンメリー」というニックネームでも知られる「365GT2+2」の後継車として、1971年のジュネーヴ・ショーにおいてワールドプレミアに供された。
2シータークーペのようなプロポーションを持ちながら、折り畳み式のリアシートを巧みに組み込んだGTC/4は、実質的には「365GTC」と「365GT2+2」という、2つのモデルを置き換えるものだった。
1960年代のレーシングプロトタイプ「365P」系に端を発するV12 SOHC・4.4Lエンジンには、4座席フェラーリとしては初めてVバンクあたりDOHCヘッドが組み合わされた。この4カムシャフトV12は、SOHCのクイーンメリーよりも20psアップとなる340psをマークし、260km/hの最高速度をもたらした。
また同時代のフェラーリ「365GTB/4デイトナ」のごとく、トランスアクスル式レイアウトは後席スペース確保のために採用されなかったものの、後輪のダブルウィッシュボーン式独立サスペンションはデイトナと共通のものとされた。
ピニンファリーナによる2+2フェラーリのデザイン
いっぽう2+2フェラーリの慣例にしたがって、ピニンファリーナがデザインワークのみならずコーチワークまで担当したボディは、この時代にギアからピニンファリーナへと移籍していたフィリッポ・サピーノがスタイリングを主導。その流れるようなウェッジシェイプや、フロントバンパーやダッシュパネルに見られるモダン志向のデザインは、先代モデルの伝統的なスタイリングから大きく逸脱していた。
デザインと性能の両面で、365GTC/4は、同じシャシーで作られた同世代の2シーターであるアグレッシブな365GTB/4よりも控えめでラグジュアリーだったが、2550mmという2+2としては短めのホイールベースのせいか、後席のスペースは最小限。最重要マーケットである北米での評価を得られず、わずか18カ月の短命に終わる。
フェラーリは1年半の間に約500台(505台説が濃厚とされる)を生産し、その多くはアメリカで販売されたといわれている。