ノンレストアと推定される、オリジナリティあふれる1台
今回の「Monterey 2024」オークションに出品されたフェラーリ365GTC/4は、シャシーナンバー「15883」。1972年8月に完成し、ネバダ州リノに本拠を置き、クラシックカーの世界的コレクターとしても知られていたウィリアム・ハラーが経営するフェラーリ代理店「モダン・クラシック・モーターズ」社を介して販売されるためにアメリカ合衆国に輸出された。
ボディカラーはメタリックシルバーの「グリージオ・アルジェント(Grigio Argento:2.443.048)」。いっぽうインテリアには、ファーストオーナーの特別注文によるものと思われる「ネロ・コゴロ(Nero Cogolo:Panno 22)」のタータンチェック柄ファブリックを組み合わせたコンビ内装とされた。
またパワーウインドウ、エアコン、ヒーター付きウインドスクリーンも、この新車の時点からメーカーオプションとして装着されていた。
マッシーニによるヒストリーレポート付き
アメリカ西海岸に到着後、シャシーナンバー15883は、カリフォルニア州ハリウッドにあるシック・ヴァンダグリフの「ハリウッド・スポーツカーズ」社に送られ、その年の暮れにファーストオーナーに納車されたと伝えられている。その幸運な初代オーナーは、2002年に手放すまでの30年間にわたり、このナンバー15883を大切に保有したという。
その後、この365GTC/4は複数のオーナーやディーラーのもとを転々としたのち、今回のオークション委託者である現オーナーの手に渡ったが、新車時のオリジナルスペックは遵守されている。
オークション公式ウェブカタログの作成時点での走行距離は3万584マイル(約4万9000km)。純正のジャッキアップキットと、フェラーリのヒストリアン(歴史家)としては世界的な大家として知られるマルセル・マッシーニ氏によるヒストリーレポートが、この出品に際しては添付されていた。
この魅力的な365GTC/4について、RMサザビーズ北米本社は22万5000ドル~27万5000ドル(邦貨換算3330万円〜4070万円)という、近年におけるフェラーリ365GTC/4のマーケット市況と比較すると、ちょっと高めのエスティメート(推定落札価格)を設定した。
ところが、モントレー市内の大型コンベンションセンターで挙行された競売では、期待されていたほどにはビッド(入札)が伸びなかったようで、手数料を合わせてもエスティメート下限を割り込む19万400ドル。つまり、日本円に換算すると約2880万円で落札されることになった。
おそらく出品者側にとっては、いささかならず不満の残るオークション結果となってしまったことは想像に難くないが、それでも生産台数のわりには国際マーケットに数多く出回っている365GTC/4で、しかも「フェラーリ・クラシケ」に関する記述の無い個体としては、決して悪くないプライスだったようにも思われるのだが……。