V6の搭載はマラネッロの“理”にかなっている
ついにF80が姿を現した。上半身はシンプルこの上なく、下半身は空力モンスター。「F40」のモチーフもあれば、最新モデル「12チリンドリ(ドーディチ・チリンドリ)」風のマスクも目立っている(ちょっと無理やりっぽいけれど!)。リアからの眺めはまるでロボットだ。さらにキャビンの小ささとAピラーの傾斜、それゆえのサイドショルダーの大きさもユニークだ。明らかに“次世代カスタマー”を意識した空力デザインである。
個人的に感動したのはベアシャシー=ボディカウルのない状態、だった。ほとんど神々しいまでに美しい。まるでF1マシンのようなバスタブとアンダーシャシーに、前後のパワートレインは素晴らしくコンパクトにまとめられ、できる限り低い位置に配された。なかでもフロントeアクスルシステムは「SF90」用に比べても相当にコンパクトだったのが印象的。モーター含め自社で開発したからこそ可能になった小ささである。
アクティブサスペンションシステムは、マルチマティック社との共同開発品。目立っていたのは前後サスペンションのアッパーアームで、最近流行りの3Dメタルプリンター製だ。
心臓部がV6ツインターボであることを否定的に思うファンもいるだろう。もちろんマラネッロにとってアイコニックなエンジンはV12であり、それを積むこと自体はコンセプトさえ変えればさほど難しいことではなかったはず(この車台には流石に無理だ)。
けれどもあえてV6にこだわった。それが今、最高のパフォーマンスを得る唯一の手法であったからだ。同時にル・マン24時間レースを制したWECマシンの「499P」はもちろん、F1マシンも今やV6である。そうなれば499Pと同じ動力アーキテクチャーをロードカーに転用することは、レースの世界でブランド力を培ってきたマラネッロの“理”にかなっているというわけだった。