バラマンディと格闘してボルテージ急上昇!
「まず、立木があるストラクチャーを狙ってみましょう」
サイモンが静かに作戦をぼくたちに伝えた。これはぼくたちが好む釣りのスタイルだ。スポーツフィッシングの醍醐味は、自分が選んだルアーを正確にポイントにキャストして誘うことにある。トローリングは効率がいいかもしれないがガイドまかせの釣りで、運がいいヤツが釣れるだけだ。
ボートが静かに進む。朝日が射し、川面には水蒸気が上がっている。
「水温が少し上がってきた。これはいいサインです」
サイモンが指差す木のストラクチャーに向かってルアーをキャストする。すると、キクの竿に、いきなりヒット! サイズは小さいが、第1投からバラマンディをキャッチした。これはいいぞ! 続いて、ケンさんにもヒット。渋いベテラン・アングラーも、満面の笑みだ。
そして、しばらく遅れて、ぼくのルアーにも元気なバラマンディが襲いかかってきた。小さくてもアタリは強く、ジャンプはするし、潜るし、よく引く。やはり、バラマンディはスポイーツフィッシングのターゲットとしては、A級の魚だ。
釣り開始から1時間ほど経ち、かなりの魚をキャッチしたが、いかんせんサイズが小さい。もっと大きい魚を釣りたい、という欲望がむくむくと沸いてくる。サイモンに聞くと、大物はいるのだが、小さい魚が先にヒットしてしまうのだという。
「チャンスはあります」
と、そのときだった。ケンさんのルアーに大きなバラマンディが飛びかかった。
「ビッグフィッシュ!」
静かなサイモンが大声を上げた。
しかし、フックアップせず、ケンさんのロッドはしならなかった。
「ちくしょう!」
ケンさんが残念がり、サイモンは「80cmはあった」と証言した。
「さあ、これからだ!」
誰かの声が上がり、4人のボルテージが一気に上がった。ウォーミングアップは終わったのだ。
これから! というところでボートが……
「岩が沈んでいるいいポイントがある。そこにいってみよう」
サイモンがそう言い、エンジンを始動させる。
ところが……。
カスカスカスと力ない音がしてエンジンがかからない。
「これはバッテリーのトラブルだ」
何度やってもエンジンはかからず、高価なフィッシングボートはただの筏になってしまった。
「クルマに戻れば、スペアのバッテリーがある」
サイモンが小さなオールを出して漕ぎ始めたが、ボートはほとんど進まない。ランプまで戻るのは不可能に思えた。
結局、30分後に通りかかった別のボートにランプまで牽引してもらうことに。ランプにいた人に「大きいのが釣れたね」とジョークで迎えられた。
その後、修理をしようとしたがエンジンはかからず、ジ・エンド。ぼくのイーストアリゲーター・リバーでの釣りは、不完全燃焼で終了してしまった。
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