クルマ好きなら一度は走ってみたいアウトバーン
ドイツ在住で、欧州のモータースポーツを中心に取材活動を続ける池ノ内みどりさん。主な移動手段であるクルマで、高速道路を使い欧州各地を駆け巡っています。一部に速度無制限区間の残る高速道路として有名なのが、ドイツのアウトバーン。しかし日本人が思い描くイメージと現実は異なります。実際のアウトバーンの走り方を紹介します。
日本人の抱くアウトバーンのイメージはもう古い?
いつもは仕事のためにひとりで運転し移動していることが多いのですが、2024年9月のある日、日本人の知人らとドイツとオーストリアのドライブ旅をすることになり、楽しくも驚きの連続でした。この旅ではほぼ助手席と後部座席専用でしたので、日頃自分で運転していると撮れない写真を撮ることができて一石二鳥です。
なかにはアウトバーンの走行経験をお持ちの方もいたのですが、まず驚いたのは、「アウトバーンの右側車線(いわゆる日本の一番左側)はトラック専用車線でつねに開けておくんでしょ?」という疑問。いえいえ、そんな規則はまったくありません。ほかにも「アウトバーンはどこでも速度制限なしで自由に走っていいんだよね」「工事現場などの速度規制の区間、なんでドイツ人は速度制限どおりにちんたら走ってるの?」というものも。
速度制限に関しては、年々速度制限解除の区間は減っています。速度規制区間はそもそも規則ですし、高い確率でオービスが隠れています。最初にこれらを耳にしたときに、日頃どのような運転をされているか、手に取るようにわかる気がしました。
速度制限が解除になった途端にいきなりアクセルを強く踏み、とんでもない回転数まで一気に上げ、速度制限解除=思いきりマックスで踏み込まなきゃ損! 的な感じが見受けられました。そのままひたすら追い越し車線を走ろうとするので、追い抜いたら走行車線に戻らなければならないことをお伝えすると、「え、こんなに空いているのに、なんでずっと追い越し車線を走っちゃダメなの?」と。
はたまた、3車線区間に入ると、右側にトラックはいなくて空いているのに、のんびりと真ん中をずっと走り続けようとされるではないですか。真ん中に留まるのではなく、一番右端の走行車線に入るべきなのですが……。
これらをお伝えしても、そのお顔は「???」という浮かない表情。「なんでダメなの?」とおっしゃるので、ドイツやヨーロッパでは常識の運転マナーであること、運転マナーが悪いドライバーは非常に運転が下手くそでどんくさいドライバーというレッテルを貼られるうえ、煽られる大きな原因にもなりうるのです。
バックミラーやサイドミラーを時おりチェックしながら流れを止めないように、追い越したら走行車線に戻るということを心がける運転をしようと私もいつも念頭に置いているつもりですが、考えごとをしながら走っているときなどは容赦ないパッシングでハッと気がつくこともありますので、気をつけなればいけませんね。
アウトバーンを走っていると、車種やドライバーの年齢・性別に関係なく、非常にスマートな運転をされる方を見かけますが、なるほど! と気づかされることもあり、そういった運転はとても素晴らしいので、お手本とするようにしています。
筆者はドイツ人から現地の運転マナーをしっかり教わった
私がまだドイツで運転を始めたころ、BMW Mに勤務の近所に住む友人らを乗せて食事に行く機会が幾度とあったのですが、その道中でさえステアリングを握る位置から運転マナーまで、非常に厳しくしつけていただいたこともあり、今はとても感謝しています。当時はもちろんイラっとしたことはナイショですが……。
「流れにのったスマートな運転」、それこそが渋滞を起こさないポイントのひとつになります。ドイツのアウトバーンは速度制限が解除される区間もありますが、自分自身のスキルや愛車のポテンシャルを認識していないと、とんでもなく怖い思いをすることも多々あります。
数年前に日本で活躍する某レーシングドライバーがドイツに来た際、「アウトバーンでめちゃくちゃ煽られて怖い」と言っていたのを思い出しました。話を聞くと、どうやら真ん中の走行車線や追い越し車線をマイペースに走り続けていたようで、なぜそれが煽られる原因になったのかがわからないと言っていました……。みなさんもお気をつけあれ。