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プロドライバーでも気持ち悪くなる速さ…ヒョンデ「アイオニック5N」のサーキット専用モードはまさにF1レベルの緻密さでした【Key’s note】

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TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: HYUNDAI

  • アイオニック5Nのイメージ
  • ヒョンデ アイオニック5N:大型ディスプレイが備わるインパネ
  • ヒョンデ アイオニック5N:バケットタイプのスポーティなシートが標準装備
  • ヒョンデ アイオニック5N:サーキット走行で役立つ情報が表示される
  • ヒョンデ アイオニック5N:各種モードもディスプレイで確認可能
  • ヒョンデ アイオニック5N:一時的に出力を高められるモードがあり、ステアリングの赤いボタンを押すことで起動
  • ヒョンデ アイオニック5N:好みの設定をすぐ呼び出せるボタンも設置
  • ヒョンデ アイオニック5N:チェッカーフラッグを連想させるペダルデザイン
  • ヒョンデ アイオニック5N:瞬時に情報を読み取れるメーター
  • ヒョンデ アイオニック5N:角張ったデザインが特徴のリアビュー
  • ヒョンデ アイオニック5N:275/35ZR21という大径タイヤを装着
  • ヒョンデ アイオニック5N:ボンネットの中のカバーにはNのロゴが鎮座する
  • ヒョンデ アイオニック5N:強烈な加速力を見せつける
  • ヒョンデ アイオニック5N:モーターならではの強烈な加速力を見せつける
  • ヒョンデ アイオニック5N:先進的なフロントマスクが特徴

サーキットを攻められる数少ない電気自動車

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「ヒョンデ アイオニック5N」です。WRCなどモータースポーツでも活躍しているヒョンデですが、電気自動車も精力的に開発しています。そのなかでも、アイオニック5に、パフォーマンスブランドである「N」の名を冠したモデルが存在。高い運動性能を、筆者が体感してみました。その実力は?

圧倒的加速力は気分が悪くなるほど……

韓国最大手「ヒョンデ」の勢いが止まりません。次々と魅力的なモデルを開発し、世界戦略を進めています。また1台、とんでもないモデルを開発し、日本に投入してきたことで世間がザワザワしています。

そのモデルは「アイオニック5N」です。アイオニック5はすでにデビューしており、純粋なBEV(バッテリー・エレクトリック・ヴィークル)として高く評価されています。そのアイオニック5の走りの戦闘力を過激なほどに高めたのが「アイオニック5N」なのです。

搭載するバッテリーは84.0kWhと大容量ですし、最高出力は650ps、最大トルクは770Nmに達します。フルスロットルの加速力に挑んでみましたが、加速して数秒で頭がクラクラし、気持ち悪くなってしまうほど。仮にも僕はプロのレーシングドライバーとして日頃から激辛パワーのモンスターに乗っていますが、それでもこの加速には身体的にやられたのです。

そんな獰猛なモンスターなのですが、驚かされるのは、サーキット専用の電子制御モードが設定されていることです。

これまでも、GPSでサーキットにいることが確認されれば、速度リミッターが解除される、あるいはフルパワーモードにスイッチングすることが可能なスポーツカーは存在していましたが、「アイオニック5N」はさらに緻密です。レースでのスタートに備えて、ローンチコントロールが組み込まれていることではもはや驚きません。さらにレース展開を予想したプログラミングがなされているのです。

サーキットを走るアイオニック5N

バッテリーの電力は電気分解です。つまり、積極的にバッテリーエネルギーを消費すれば発熱します。回生で電力を溜め込めばそれでも発熱します。駆動用モーターも同様です。

異常発熱すると、性能が低下します。充電能力が低下するばかりか、有効な出力が発揮できません。ですから、充放電が激しく繰り返されるスポーツ走行で速く走らせるのは苦手なのです。

1000Nmのエネルギーがあっても、そんな脱兎のごとき速さが味わえるのは最初の数秒ほどで、すぐにカメのように鈍重になるのがBEVの特性なのですが、「アイオニック5N」は緻密に温度管理することで、出力低下の被害を抑えようとしています。

最適制御のおかげで決勝レースを走り切れる

予選モードは1周だけ速く走ればいいわけですから、発熱のことは気にせずにフルパフォーマンスを発揮するようにプログラミングされています。一方決勝レースでは、コンスタントラップが求められます。レースモードでは、バッテリーとモーターの発熱を監視しながら最適な出力コントロールをするというのです。これはもう、F1やWRCなどの世界選手権レベルですよね。

メーター内には、前後のモーターとバッテリーの温度が表示されています。それを目で追いながらスロットルコントロールするのも楽しみですが、クルマにすべてを委ねて走るのも都合がいいかもしれませんね。

ちなみに、「アイオニック5N」の「N」はヒョンデのトップパフォーマンスブランドの名称です。例えるならばBMWの「M」、メルセデスの「AMG」、アウディの「RS」ですね。

語源はニュルブルクリンクの「N」です。最近でヒョンデは難攻不落なニュルブルクリンクのレースに挑戦しています。そこでマシンを鍛えているのです。だからといって、レースモードを組み込んでいるなんて、想像もつきませんでした。素晴らしいです。

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  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
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