ひとクラス上の上質なクルマ
しかもアクセルを踏む右足に少し力を入れるだけでスーッと加速してくれるからロングドライブも全くノーストレスだ。ただし、これは平坦なセクションでのこと。今回のようにシエラネバダ山脈を突っ切っていくような登りのセクションでは、もう少し右足に力を込める必要があったが、特にフルスロットルだった訳でもない。だから一言で言うならパフォーマンスは必要にして十分、と判断してよいだろう。
かつて学生時代には空冷2気筒のホンダZを愛用し、四国地方をメインに西日本一帯を走り倒していて、初めてシビックRSを走らせた時、そして初めて親父のアコードをドライブした時の、それぞれの感動は、はっきりと記憶に残っている。もちろん数値化されたデータではなく、見える化とは無縁のイメージでしかなく、それも半世紀近くも昔のことなので記憶も曖昧になっているから、全く説得力がないのは承知の上、と断りながら言ってしまうなら、初代シビックのRSと初代アコードのEXの立ち位置は、北米でドライブしたインテグラのタイプSとアコードのTouring Hybridのそれに通じるものがあった。
つまりスポーティに振った上級モデルと、ひとクラス上の上質なクルマ、という訳だ。もう少し付け加えておくなら、RSやタイプSが程よく強化したエンジンとサスペンションを持ったスポーティな上級モデルなら、EXやTouring Hybridはより上質にシフトした格上のクルマとでもいったら、よりイメージし易いかもしれない。
インテリジェンスなドライビングスタイルが似合うクルマ
アコードと言えば忘れられない思い出がある。まだ学生時代、ホンダZでブイブイ言わしてた(?)頃のことだった。若葉マークは卒業していたけれど、なかなか親父のアコードを運転する機会には恵まれてなく、偶に借りることができても、ホンダZをドライブしているのと同様に、右車線に左車線に、と隙間を見つけては車線変更しながら先を急ぐような運転をしていて姉貴に諭されたことがあった。
アコードを運転する時にはアコードに相応しい運転をしなきゃ、と。孫が社会人となった今では娘と2人で藤井風くんのライブに出かけるような、くだけたお祖母さんになっているが、当時は親父や兄貴よりも怖い存在だったから反論する余地もなく、少なくとも姉貴の見ている前ではその仰せ通りに従順しい運転スタイルを心掛けていた。
ただ、1人で運転するようになってからはZスタイルのドライビングに戻っていたのは否定しない。今回アメリカでドライブしたアコードのTouring Hybridは、まさに半世紀近く前のアコードEXと同様に、従順しい、というかインテリジェンスなドライビングスタイルが似合うクルマだと直感できた。
しかしその一方でキビキビとしたドライブを楽しむようなスタイルも似合っているようにも感じられた。ということで、姉貴も見ていなかったことだし、後者のドライビングスタイルでロングツーリングを心行くまで楽しむことになった。姉貴、これがアコードに相応しい運転だよ、と憎まれ口をききながら。