巨大台風ほどの大きな風の力を活用
「ミストラル」とは南フランスを吹き抜ける独特な風であり、季節の変わり目を告げる風のこと。「フォルムはパフォーマンスに従う」というブガッティの理念からも、風や空気はブガッティのデザインに大きな影響を与えています。W16エンジンを搭載した輝かしいモデルラインの最後の1台、「W16ミストラル」はこの目に見えない「空気」をどのようにデザインしたのでしょうか。ブガッティの空気に関する考えを紹介します。
最高速度は驚異的な420キロ
「フォルムはパフォーマンスに従う」というブガッティの長年にわたる理念に忠実に、「W16ミストラル」は空気を巧みに活用している。ミストラルの類まれなドライビング体験は、1世紀にわたる空力学の研究によってもたらされている。最高速度420km/hで屋根のない強烈な体験を味わえるこのモデルは、最高のデザインと最高のエンジニアリングの結晶ともいえる。
馬蹄形グリルはこれまでの象徴的なモデルのデザインを再考し、3Dプリントメッシュを装備することで空気を中央のラジエターに導く。この結果、最高出力1600psを達成し、4ターボのW16エンジンの冷却に必要なパワーがもたらされた。また、空気の力を活用するデザインの役割はフロントライトユニットにも及び、性能要求に基づいた形状の追求をさらに進めている。ライトは8つのライトエレメントを持つ「シロン」のデザインを踏襲し、「ディーヴォ」や「ラ・ヴォワチュール・ノワール」などのモデルへのオマージュとして製作されたデザインは、空気のカーテンを誘導する溝により空気抵抗を低減する役割を果たしている。
最大限のパフォーマンスを引き出すために高い位置に持ち上げられたCラインにはエアインレットが設けられ、圧力レベルをさらに高めている。エアインレットは空気と圧力を同時に処理し、エンジン、ギアボックス、リアアクスルを冷却している。ブガッティの指針となる理念に忠実に、Cラインの形状もパフォーマンスを追求している。優雅に続くラインはレーシングヘルメットのバイザーの美学を思わせ、フロントガラスを横切る一体型クロスビームはオープンコクピット上の気流をスムーズにし、空気をリアウイングに導いて最大限のダウンフォースを生み出す役割を果たす。
ウインドウに接する部分はエアスクープを通り過ぎ、1934年製の「タイプ57 ロードスター・グランドレイド・ウジーヌ」から、近代的なオープンエアのブガッティである「ヴェイロン16.4 グランドスポーツ」まで続く伝統に敬意を表している。W16ミストラルではこれらの彫刻的な優雅さと性能を融合し、新たに高度に進化した独自のエアインテークシステムが導入されており、強靭なカーボンファイバー製クラッシュ構造に統合されている。