エアロダイナミクスと洗練されたデザインを融合
スクープから8L 16気筒エンジンの4つのターボチャージャーに空気が送り込まれ、驚異的なパワーを発揮。エンジン音はスクープによって増幅され、キャビン内の乗員に自動車の世界では比類のない聴覚体験をもたらす。
16気筒エンジンを冷却するラジエターから排出される熱気は、ダクトを通ってリアへと導かれる。これは、全体的に複雑なキャンバスにおける最も洗練されたデザインのひとつである。負圧によって引き込まれた熱気は、X型テールライトの通気口から排出される。この見事なディスプレイは、「ボライド」からインスピレーションを得たもの。強化されたランプのディフューザーにより、車両後部から排出される空気の流れを劇的に加速し、高温の空気をさらに排出するとともに、高速走行時のダウンフォースを全体的に増加させる役割も果たすのである。
AMWノミカタ
最高速度420km/hの屋根のない体験とは一体どのようなものなのだろうか。まったく想像がつかないが、W16ミストラルの最高速度を風速に換算すると約116m/秒となる。ちなみに世界最大の風速を持った台風は1996年にサイクロン・オリビアによってオーストラリアのバロー島で観測された113m/秒だそうだ。巨大台風ほどの大きな風の力をブガッティのエンジニアは活用しコントロールする知見をもっていることに驚く。
2019年にシロンはドイツのエーラ・レッシェンというVWのテストコースで時速304.77マイル(490.48km/h)という記録を打ち立てた。このときは時速300マイル(約480km/h)を達成するための特別な仕様だったというが、生産モデルでも最高速度420km/hを記録している。しかしW16ミストラルのシロンとの違いはオープンで時速420km/hを体験できる点である。屋根がないことで空気の流れは数段複雑になり、さらに高度なエンジニアリング技術が求められることは想像に難くない。エットーレ・ブガッティは自らに困難な課題を課すことを躊躇しない人物だったというが、その飽くなきチャレンジ精神はW16ミストラルにも受け継がれている。