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8億5500万円! 高値安定のフェラーリ「250GT スパイダー カリフォルニア」は、かつて日本のコレクターが所有していた個体でした

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

フェラーリ美術館に展示され、日本のフェラーリ専門誌でも特集

それから約10年ののち、このフェラーリ250GT スパイダー カリフォルニアは、わが国の地を踏むことになった。2004年のモントレー・カーウィークにおいて開催されたオークションで、世界屈指のフェラーリ・コレクターだった松田芳穂氏が見初めたことから、有名な「マツダコレクション」が入手することになったのだ。

ただ、かつての御殿場「フェラーリ美術館」に置かれた期間は非常に短かったものの、日本のフェラーリ専門誌『スクーデリア』(旧ネコ・パブリッシング社刊)2005年2月号にて、大特集が組まれている。

じつはこの特集の取材に立ち会い、原稿を書いたのが筆者自身だった。また、ほんの少しながらステアリングを握る機会もあったのだが、予想していた以上に身のこなしが軽くて、その以前に乗ったことのあった「250GT-SWB」を連想させられたことから、スカリエッティ製コンペティツィオーネの血統は争えない……と感じたことを、取材から20年の時を経た今でも鮮明に記憶している。

また、所有者である松田氏もずいぶんお気に入りのご様子に見えたはずが、同じ2005年の8月、このフェラーリは旧「RMオークション」時代からフラッグシップだった「Monterey」セールに出品され、現オーナーが手に入れることになった。

それ以来、カリフォルニアは19年間にわたり、入念な空調管理のもとで保管され、ほとんど使用されていない本物のコンディションを保っている。ただし今回のカタログ写真を見ると、内装の赤いレザーは新車同然だった当時と比べると、レストア以来30年の経過を感じさせるような「ヤレ」も見受けられるものの、これはこれで魅力的ではある。

なにより、シャシーナンバー1217GTがナンバーズマッチのV型12気筒エンジンを維持していることは、このクルマの正統性を大いに高めている。

ただし現在この1217GTには、別の250GT系モデルのものと思われる内部番号「238DR」が刻印されたギアボックスが、オリジナルと推定されるリアアクスルに組み合わされていることも正直に申告されていた。

驚くべき落札価格でハンマーが鳴らされた

さらにこの個体は、ジョージ・キャリック著の『スパイダー カリフォルニア』とスタンリー・ノヴァックの『フェラーリ オン ザ ロード』という2冊の権威ある文献にも、極めて正統性の高い250GT スパイダー カリフォルニアとして登場していることも、特筆すべきトピックであろう。

フェラーリ250GT スパイダー カリフォルニアは、フェラーリがショートホイールベースのプラットフォームを導入する前に、ロングホイールベースのシャシーで50台が製造された。SWBにも一定のファンがいることは間違いないものの、2600mmのオリジナルホイールベース版は、多くのエンスージアストや識者の意見では、よりエレガントでスタイリッシュと見なされている。

RMサザビーズ北米本社は「かつて世界有数のフェラーリ・コレクションの一部であった1217GTは、そのまま楽しむことが可能であり、また、より徹底的なリフレッシュの有力な候補でもある」というPRフレーズを添えて500万ドル〜650万ドル(邦貨換算約7億4000万〜9億6200万円)という、このモデルのマーケット相場に即したエスティメート(推定落札価格)を設定した。

そして、モントレー市内の大型コンベンションセンターで挙行された競売では561万5000ドル。現在のレートで日本円に換算すれば、約8億5500万円という驚くべき落札価格で競売人の掌中のハンマーが鳴らされることになったのである。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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