インテリアはゴールドを随所にあしらう
インテリアは、オリジナル版のインテリアの配色にインスピレーションを得たゴールドのディテールが映えるように選ばれた、エレガントで洗練されたネイビーのレザーとロイヤル・ウォールナットのウッドパネルで仕立てられている。リア・スイートにはリクライニング・セレニティ・シートが用意され、ゴールドのステッチとパイピング上部の金色の「銃弾」、ゴールドの「RR」のモノグラムがあしらわれたヘッドレストでさりげなく飾られている。
ロールス・ロイスのビスポーク集団は映画『007/ゴールドフィンガー』に敬意を表し、18金と24金を用いた極めて精巧なディテールや仕様をいくつか生み出した。そのひとつが、フロントシートの間のセンターコンソールに用意された隠された保管庫である。これは、ファントムの「スピードフォーム」(車体デザインを示すミニチュアの型)で成形された、イルミネーションで照らされる18金の輝く金塊を収められるようデザインされた。
フロントとリアのセンターコンソールのベース部分も、グローブボックスの内側と同様に、洗練されたゴールド仕上げになっている。グローブボックスの内側のリッドには、ゴールドフィンガーの象徴的な台詞「これが金ですよ、ボンドさん。私は生涯にわたってこの色、この輝かしさ、そしてこの神聖な重厚感に心奪われてきました(This is Gold, Mr Bond. All my life, I have been in love with its colour, its brilliance, its divine heaviness)」があしらわれている。
車内全体のエアベントと「オルガン・ストップ」にも、光沢のあるゴールド仕上げが施されている。スピーカー・フレットも同じゴールド仕上げで、映画のタイトルが刻まれている。トレッドプレートは映画に登場するゴールドバーを模したデザインで、1964年に映画のために作成されたフォントがあしらわれる。24金メッキが施されたVINプレートには特別に取得された車両識別番号が刻まれており、その末尾は「007」となっている。
フルカ峠の等高線地図を芸術的に表現
フロント・フェイシアの全幅にわたるギャラリーに配されたビスポークのアートワークは、手描きでフルカ峠の等高線地図を精密かつ芸術的に表現している。スターライト・ヘッドライナーは、スイスでの撮影最終日だった1964年7月11日にフルカ峠の上空に広がっていた星空を再現。719個の星は微妙なゴールドの色合いを帯びて輝き、それをさらに8個の「流れ星」が取り囲んでいる。
ロイヤルウォールナットのピクニックテーブルは、深さわずか0.1mmの22カラットの金象嵌で飾られ、米国の金準備が保管されている地金保管庫フォートノックスの架空の地図が描かれている。このデザインは、3つのプロトタイプを6カ月かけて完成させたもので、ゴールド・ボールト・ロード、ブリオン大通り、ゴールドフィンガーが「グランド・スラム作戦」で攻撃する予定の地金保管庫などの主要な場所が描かれている。
AMWノミカタ
映画で使用されたオリジナルのファントムIIIは1934年から1939年にかけて710台ほど生産された、ヘンリー・ロイス卿が最後に手がけたモデルである。ファントムIIIで最も重要だったことは、ロイスが求めていたパワーアップを実現したことで、ファントムIIでは120馬力だったものが、180馬力まで向上した。
シャシーもまた、設計において大きな飛躍を遂げた。ロイスはファントムIIIに独立したフロントサスペンションを装備し、乗り心地とステアリングコントロール性能を大幅に向上させた。ロイスの設計チームは、オーナーや同乗者はおそらく気づかないような、劣悪な路面で発生する騒音、振動、ハーシュネスの伝達を大幅に低減する小さな技術的進歩も数多く取り入れたという。