映画『007/ゴールドフィンガー』60周年を祝して世界に1台のファントムが登場
ロールス・ロイスは1964年のジェームズ・ボンド映画『007/ゴールドフィンガー』の公開60周年を記念して、劇中で使われた1937年製の「ファントムIII セダンカ・デ・ヴィル」をモチーフにした1台限定の「ファントム エクステンデッド ゴールドフィンガー」を製作したと発表しました。ロールス・ロイスだけではなく、映画ファンにも魅力的なモデルの詳細について紹介します。
悪役が乗ったファントムIIIから着想を得て3年かけて製作
2024年10月25日、ロールス・ロイス・モーターカーズは1964年のジェームズ・ボンド映画『007/ゴールドフィンガー』の公開から60年を祝う1台限りの「ファントム エクステンデッド ゴールドフィンガー」を製作したと発表した。インスピレーションの源となったのは、同作品の悪役、オーリック・ゴールドフィンガーが所有する1937年製の「ファントムIII セダンカ・デ・ヴィル」。この不朽の名作のプロットや象徴的な要素にちなんだ精巧で創意工夫に富んだビスポークにより、映画のストーリーを巧みに反映している。
このビスポーク・モデルには、ロールス・ロイスがこれまで手がけてきた1台限りの作品と同様に専用の仕様が盛り込まれており、それぞれが映画のプロットと関連している。フルカ峠で撮影された有名なシーンにインスピレーションを得た複雑な造形のギャラリーや、オーリック・ゴールドフィンガーがジェームズ・ボンドと初めて出会ったときに登場したゴルフクラブを彷彿とさせる黄金のパターがトランク内に据え付けられているなど、エレガントで遊び心のあるビスポークが散りばめられ、完成に3年の歳月を要している。
独自の「ロングサイド」ツートーン・デザインを開発
ボディは映画で使用されたファントムIII セダンカ・デ・ヴィルのイエローを正確に再現。ブラックのペイントがゆったりとしたコーチワークをひと続きに包み込む、独自の「ロングサイド」ツートーン・デザインも開発された。ブラック仕上げの21インチのディスクホイールにはシルバーの「フローティング」ハブキャップが装着され、映画に登場するファントムIII セダンカ・デ・ヴィルのホイールデザインを彷彿とさせる色調を用いた繊細なコントラストが表現されている。
先端を飾るスピリット・オブ・エクスタシーも、映画のストーリーラインをさりげなく示唆する特別な仕上げが施されている。映画では、オーリック・ゴールドフィンガーが自身のファントムのボディパネル内に金塊を潜ませ密輸していた。これにちなみ、スピリット・オブ・エクスタシー像をシルバーで覆って純金の本体を隠しているかのように、一部に金をのぞかせている。実際には金に銀メッキ加工を施すことはできないため、職人たちは純銀製のスピリット・オブ・エクスタシーに18金で巧みに金加工を施すことで、「ゴールド・リビール(露出する金)」効果を実現している。
インテリアはゴールドを随所にあしらう
インテリアは、オリジナル版のインテリアの配色にインスピレーションを得たゴールドのディテールが映えるように選ばれた、エレガントで洗練されたネイビーのレザーとロイヤル・ウォールナットのウッドパネルで仕立てられている。リア・スイートにはリクライニング・セレニティ・シートが用意され、ゴールドのステッチとパイピング上部の金色の「銃弾」、ゴールドの「RR」のモノグラムがあしらわれたヘッドレストでさりげなく飾られている。
ロールス・ロイスのビスポーク集団は映画『007/ゴールドフィンガー』に敬意を表し、18金と24金を用いた極めて精巧なディテールや仕様をいくつか生み出した。そのひとつが、フロントシートの間のセンターコンソールに用意された隠された保管庫である。これは、ファントムの「スピードフォーム」(車体デザインを示すミニチュアの型)で成形された、イルミネーションで照らされる18金の輝く金塊を収められるようデザインされた。
フロントとリアのセンターコンソールのベース部分も、グローブボックスの内側と同様に、洗練されたゴールド仕上げになっている。グローブボックスの内側のリッドには、ゴールドフィンガーの象徴的な台詞「これが金ですよ、ボンドさん。私は生涯にわたってこの色、この輝かしさ、そしてこの神聖な重厚感に心奪われてきました(This is Gold, Mr Bond. All my life, I have been in love with its colour, its brilliance, its divine heaviness)」があしらわれている。
車内全体のエアベントと「オルガン・ストップ」にも、光沢のあるゴールド仕上げが施されている。スピーカー・フレットも同じゴールド仕上げで、映画のタイトルが刻まれている。トレッドプレートは映画に登場するゴールドバーを模したデザインで、1964年に映画のために作成されたフォントがあしらわれる。24金メッキが施されたVINプレートには特別に取得された車両識別番号が刻まれており、その末尾は「007」となっている。
フルカ峠の等高線地図を芸術的に表現
フロント・フェイシアの全幅にわたるギャラリーに配されたビスポークのアートワークは、手描きでフルカ峠の等高線地図を精密かつ芸術的に表現している。スターライト・ヘッドライナーは、スイスでの撮影最終日だった1964年7月11日にフルカ峠の上空に広がっていた星空を再現。719個の星は微妙なゴールドの色合いを帯びて輝き、それをさらに8個の「流れ星」が取り囲んでいる。
ロイヤルウォールナットのピクニックテーブルは、深さわずか0.1mmの22カラットの金象嵌で飾られ、米国の金準備が保管されている地金保管庫フォートノックスの架空の地図が描かれている。このデザインは、3つのプロトタイプを6カ月かけて完成させたもので、ゴールド・ボールト・ロード、ブリオン大通り、ゴールドフィンガーが「グランド・スラム作戦」で攻撃する予定の地金保管庫などの主要な場所が描かれている。
AMWノミカタ
映画で使用されたオリジナルのファントムIIIは1934年から1939年にかけて710台ほど生産された、ヘンリー・ロイス卿が最後に手がけたモデルである。ファントムIIIで最も重要だったことは、ロイスが求めていたパワーアップを実現したことで、ファントムIIでは120馬力だったものが、180馬力まで向上した。
シャシーもまた、設計において大きな飛躍を遂げた。ロイスはファントムIIIに独立したフロントサスペンションを装備し、乗り心地とステアリングコントロール性能を大幅に向上させた。ロイスの設計チームは、オーナーや同乗者はおそらく気づかないような、劣悪な路面で発生する騒音、振動、ハーシュネスの伝達を大幅に低減する小さな技術的進歩も数多く取り入れたという。