誰もが一瞬で魅了されるに違いないモデル
2024年8月15日〜17日にRMサザビーズがアメリカ・モントレーで開催したオークションにおいてブガッティ「シロン スポーツ ノワール」が出品されました。登場したモデルは、シロン スポーツの中でも20台のみが生産された「ノワール」(ブラック仕様)の1台で、マットカーボンファイバー仕上げにアクセントライン、ミラー、キャラクテールホイール、ブレーキキャリパー、ユニークなメッシュホースシューグリルにノクターン塗装が施されています。車両の解説と、気になるオークション結果についてお伝えします。
ヴェイロンの後継モデルとして登場
VWグループ傘下で復活を果たした、いわゆる第3期ブガッティ。その市販第1号車である「ヴェイロン」は2005年にデビューし、2015年にその生産を終了するまでに、さまざまなバリエーションが合計450台生産され、世界のスーパーリッチなカーマニアの目を魅了してきた。そしてその後継車として2016年のジュネーブ・ショーで発表されたのが、ここで紹介する「シロン」である。
そのような事情を知ると、我々はシロンを簡単にヴェイロンの進化型と表現したくなる傾向にあるが、実際にヴェイロンとシロンとの間にあるテクニカルな差異は、そのような単純な言葉で語ることができるほどに小さなものではなかった。
たとえばミッドに搭載されるエンジンは8LのW型16気筒クワッドターボで、基本スペックはヴェイロンと共通だが、注目の最高出力は1500ps、最大トルクは1600Nmにまで引き上げられ、もはやシロンはヴェイロンとは次元の異なる領域に足を踏み入れたハイパーカーとして生を受けたともいえる。0-100km/h加速は2.5秒以下、0-300km/h加速は13.6秒以下、そして最高速は420km/hとアナウンスされたシロンは、まさにハイパーカーの頂点を極めた1台だった。
ドライビング・ファンを重視した派生モデルが2018年に登場
そのシロンに初のアップデート版が誕生したのは、2018年のジュネーブ・ショーでのこと。「シロン スポーツ」とネーミングされたそれは、スタンダードなシロンよりもさらにダイナミックでドライビング・ファンを重視した派生モデル。カーボンファイバー素材をより多く使用し、軽量ホイールや軽量ガラス、また専用のカーボンファイバー製フロントガラスワイパーの装備などで、車重をさらに18kg低減。
それに加えてよりレスポンスに優れ、正確なステアリングと改良されたトルクベクタリング・システム、硬めのスプリングとアンチロールバー、4本のエグゾーストパイプ、エアロダイナミクスの改善など、スポーツの名を掲げるにあたっての改良策は多岐にわたり、カスタマーは約27万5000ドル(邦貨換算約4022万円)のエクストラを支払うことで、イタリアのナルド・リンクをスタンダードのシロンより5秒も早いラップタイムで走ることができるシロン スポーツを手に入れることができた。
20台限定のノワールとは?
RMサザビーズが、2024年のモントレー・オークションに出品したシロン スポーツは、その中でも20台のみが生産された「ノワール」モデル(ブラック仕様)の1台。このモデルの外装は、非常にドラマチックで、どこか不気味な「スポーツ」バージョンとして、マットカーボンファイバー仕上げにアクセントライン、ミラー、キャラクテールホイール、ブレーキキャリパー、ユニークなメッシュホースシューグリルにノクターン塗装が施されている。
ボディの流れるようなラインは、リアウイングサポートやエンジンカバーに至るまで、一切の光沢仕上げが施されておらず、この漆黒のエクステリアにコントラストをもたらしているのは、ソリッドシルバーとブラックエナメルのバッジだけという仕上がりだ。見事に仕上げられたインテリアは、ベルガブラックレザーとブラックカーボンファイバーでまとめられ、この堂々としたハイパーカーの暗黒的な世界を完成させているのは誰の目にも明らかだろう。
車両とともに保管されている仕様書によると、このスポーツ ノワールは2021年9月にカナダに納車され、それ以来の走行距離はわずかに418マイル(約669km)。世界でわずかに20台しか生産されていないという希少性、そしてもちろん高度な技術を駆使した最高級のスピードマシンを愛する人ならば、誰もが一瞬で魅了されるに違いないこのモデルに、RMサザビーズは330万ドル~380万ドル(邦貨換算約4億8266万円~約5億5579万円)のエスティメート(推定落札価格)を設定。最終的には336万ドル(同4億9143万円)での落札という結果になった。新しいオーナーのもとで大切に保管され、そして時にはオフィシャルな舞台に姿を現してくれることを期待したい1台である。