アルトにこだわりマシンメイクを追求
軽自動車レース「東北660選手権」で最大の激戦区といわれる3クラス。そこを勝ち抜いたドライバーがステップアップし、さらに高いレベルで腕を競い合うのが2クラスです。今年も3クラスでチャンピオンに輝いた強者や、彼らの背中を追いかけるチャレンジャーが集い、闘志をむき出しにしたバトルを繰り広げています。2クラスに参戦する注目ドライバーを紹介します。
突き詰めた結果、参戦全台数で一番軽いマシンに
まだ大学生だった2021年から東北660に参戦し続け、翌年には圧倒的な速さで3クラスを制した石川颯人選手。2025年シーズンからは「1クラスに挑戦します!」と宣言した彼が、文字どおり不退転の覚悟を示すかのように快進撃を続けている。
初めてのモータースポーツ経験は実車ではなくグランツーリスモ。都道府県対抗eスポーツ選手権に出場するなど、まずはバーチャルの世界で経験を積んできた。それから実車のレースへ歩みを進め、初めての東北660シリーズは耐久レースだった。
自他ともに認める生粋のHA23フリークである石川選手は、ダイハツ勢が増えた今もスズキ「アルト」へのコダワリを強く持つ。車両もレギュレーションの範囲内でギリギリまで作り込み、とくに空力パーツやコクピットは本物のレースカーも顔負け。HA23型最大の武器は軽いボディだと考えており、シーズン開幕後もさらに軽量化を進めてきた。宮城県スポーツランドSUGOの第3戦で車重をチェックしたところ、アルト以外のクルマを含めた全車両で最軽量だったという。
徹底した軽量化で表彰台のてっぺんを狙う
ドアは純正の内装を取り払い薄く軽いタイプに交換し、開閉するハンドルはなんとカーボンでワンオフ製作。また軽さだけではなく重量バランスも追求し、バッテリーなどは室内の助手席側に移動させた。
空力もフロントに下側のリップ部分が長い「アクエリアススポーツ」製を使用したり、「レーシングハマー」製のウイングにカーボン板をやや下向きの角度で追加するなど、パワーに勝るダイハツ勢と戦うためのノウハウがあらゆる部分に詰め込まれている。
マシンメイクはeスポーツ時代の所属チームや当時の仲間たちを筆頭に、偶然の出会いだった仙台のプロショップ「Sリミテッド」からのサポート、そして東北660シリーズに参戦する先輩のバックアップがあってこそ。マシンの各部に貼り付けられた協賛企業のステッカーは、石川選手の「勝って恩返ししたい」という気持ちの表れだろう。
なおエンジンはベース車両に載っていた状態のままで、オーバーホールはあえて行っていない。2025年シーズンからの1クラス参戦に備えシーズンが終わればエンジンを開ける予定で、同時にレギュレーションで認められたフルコン制御にも挑戦するという。
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プロショップのデモカーや公式レースの経験が豊富なベテランに加え、ここ数年で2クラスからのステップアップも増えた最高峰の1クラス。バーチャルな世界でのレースが初体験という、異色ながらもイマドキな経歴を持つ石川選手が、どんな戦いをみせるのか今から楽しみでならない。