クルーを苦しませ楽しませていた区間もあった!
今回のソネット・ラリーには、ある林道でアベレージ18km/h走行の指示があり、チェックポイントが出現するまでは長距離ともいえる8.6Kmほどがあったという、クルーのみなさんを苦しませ楽しませていた区間がありました。いつチェックポイントが出現するかに対処するべく、30分近くスポーティな緊張ドライブを続けて行くことになったわけです。
「運転手が大変。ちょっとアクセルを踏んでしまうと18km/hでは走れない、林道路面状況でブレてしまうこともあり、把握しなければならない走行距離も合わない。これといった走行メーター数値の調整などしてはいないんですが、今回の同じルートの往路復路でも数値が違ってくるんです。お互い信頼してひたすらアベレージ速度を貫くだけでした」
登り下りの山道で長々と続けなければならない低速ドライビング。その駆け引きは、まさにドライビングの技量と集中力とコミュニケーション力を鍛えることのできる指示速度だったようです。
かのサファリラリー・レジェンド・ラリーストの岩瀬晏弘さんも、昨年来、関東デイラリーにチーム・サファリの呼び名で参加し続けています。今回も友達が友達を呼び込む自然現象となり、10クルー近くが集ってラリーの楽しさを分かち合っていました。
ラリーは様々なシュチュエーションを乗り越えるオリンピック競技の馬術
1950年代後半にラリー競技が日本で始まって以来、アベレージ走行のラリーは、日本の道路交通環境がもたらした日本独自の計算ラリーとも言えます。JAF公認競技ですからもちろん世界選手権のFIAのラリー競技規則に準拠したものです。公道に占有したスペシャルステージを設けてスピードを競うWRCのようなシーンはありませんが、乗り込んだドライバーたちとクルマとのスポーティなやりとりの基本が身に付くモータースポーツ競技なのです。例えて言えば、スピードを競うダービーがレースならば、ラリーはさまざまなシュチュエーションを乗り越えるオリンピック競技の馬術のようなもの。
時代は変わりゆくものです。規則が定められているクルマでのスポーツとして、日本独自の公道環境のなかでの発展を遂げていたとも言えるアベレージ・ラリーは、興行の競技イベントであるF1などとは違って、誰もが挑戦できるモータースポーツともいえます。ですからひょっとして、オリンピック競技のひとつの種目になる日がいずれ来るかもしれないような気もします。
ともあれ、気軽に参加してモータースポーツを味わってみるに最高なラリーがデイラリーシリーズでしょう。参加料金も2~3万円と、他のイベントと比べてみてもコスパの良さがあります。おまけにJAFの競技Bライセンスが申請できます。座学講習でライセンスを取得するより実体験で学べる貴重なものがあります。
ビギナーからベテランまでが“同じ土俵”で戦っているデイラリー、「鮒に始まり鮒に終わる」という釣りの名言になぞらえるとしたら、デイラリーからラリーの世界に入り、どんなに経験をつんでもまたデイラリーに戻って来るとでもいいましょうか、そんなイベントでした。また、生活にいちばん近いモータースポーツであるラリーですから、ラリーから始まりラリーに戻るのかもしれません。デイラリーのひとコマひとコマから、ラリーの奥深さが垣間見られました。
スズキ「キャリィ」、マツダ「CX-5」、スバル「レガシィ」、「ヴィヴィオ」、「ギャランGTO」、ランチア「デルタ」、ローバー「ミニ」、ダイハツ「コペン」……参加車両もなんでもありで賑わってましたので、写真ギャラリーをご覧ください。