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中国がなぜEV化政策を推し進め、なぜタイで中国自動車組立工場が続々と建設されるのか? バンコクモーターショーの活況から理由が見えてきました

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TEXT: 斎藤 聡(SAITO Satoshi)  PHOTO: 斎藤 聡(SAITO Satoshi)

EV推進の風は欧州とは別の動力源だった……?

そんな中、なぜタイではハイテンションにEV化を推進しているのだろう。その理由はいくつか考えられるが、最も大きな要因となっているのが中国だ。

中国が国を挙げてEVを推進している。欧州でEVが振るわないのは、単純に補助金が減額され、あるいはなくなって割高になったことが大きい。もちろん競争力のある内燃機関を作る技術力があるというのがベースにある。

一方、中国では自動車先進国並みの内燃機関を造るには、クリアしなければならないハードルが多い。しかしEVであればハンディがない。中国政府は、「支配的地位の確立を目指す産業分野のひとつ」としてEVを位置付けており、地方政府に政策の強化を求めている。

これをうんと意訳すると、「内燃機関で世界制覇はできないけれど、EVならそれができるので国を挙げて推進するぞ!」ということになる。

ASEANと中国の間で結ばれているゼロ関税協定からもわかるように、中国はASEAN地域にとても大きな影響力を持っており、これはEVに関しても例外ではない。ASEAN地域にいま吹いているEV推進の風は、じつは欧州とは別の動力源……つまり中国によるものなのだ。

積極的に工場建設が進められている

タイのEV事情に戻ると、タイ政府がEVを推進していることも、タイ国内でのEV販売増加に拍車をかけている。2023年でいうと、7〜15万バーツ(約28〜60万円)のEV購入補助金を提供する。

その一方で2023年に補助金を受けて輸入販売したメーカーは、販売したEVの台数分だけ2024年中にEVをタイ国内で生産しなければならないという取り決めになっている。タイ国内生産が2025年にずれ込むと1台につき支給した補助金の1.5倍を支払わなくてはならない。

これがタイへのEV進出のハードルになるのではないかという考えが一瞬頭の隅をよぎったが、タイにおけるサプライチェーンの充実を考えれば、むしろ進出し生産工場を建てる方がメリットが大きいと言え、積極的に工場建設が進められている。

2009年〜2022年まで、中国では新エネルギー車支援として総額25兆円超の補助金が拠出された。そのため多くの企業がEV生産に参入した。そして、これが過剰生産の要因を作ることにもつながったのだ。

工場の稼働率が上がらず、各メーカーの利益率はじつはそれほど高くなっていない。そんな背景もあって、中国メーカーは世界に進出する動きを見せている。そのひとつがタイというわけだ。

深く広くEVの販売が浸透していく動きが見えてきた!

中国自動車メーカーにとって、タイはASEAN地域の自動車生産大国であり、部品のサプライチェーンの構築も容易。タイも国を挙げてEVを推進しているため、進出しやすい土壌がある。

組み立て工場も、上海汽車(MG)は2014年から、長城汽車(GWN)は2021年から現地生産を始めている。ネタも2023年11月に5万台規模の工場を稼働。広州汽車(AION)も7月中に工場を完成させており、BYDが2024年7月に乗用車工場の竣工式を開催する。さらに長安汽車紀淡汽車も建設計画が進められている。

2022年、タイ国内での自動車販売台数は日本車が8割以上を占めており、圧倒的な強さを誇っていた。販売台数では、現在もトヨタが圧倒的な強者として君臨しているが、今後中国メーカーが本格的に現地生産に入ると、2024年のバンコク国際モーターショー期間中の販売台数のようにガラリと勢力図が変わる可能性も否定できない。

タイ国内では、減額されたとはいえ依然としてEV補助金が支給されており、いくつかの中国メーカーは減額を補う形でEV車の値下げを行うなど、いよいよ深く広くEVの販売が浸透していく動きがみられるようになった。

バンコク国際モーターショーは、数少ない活気のある自動車ショーであり、ショー自体に見ごたえがあり楽しいが、同時に、台頭する中国メーカーをちょっとだけ深掘りしてみると、欧米の経済圏とは異なるアジア・ASEAN地域の政治・経済の動きが見えてくる。

バンコク国際モーターショー関係者筋の話によると、2025年は展示ホールを拡大し、新たに2社中国メーカーが出展を予定しているという。そしていよいよ本格稼働を始める中国自動車組立工場。はたしてタイのEVシーンはどんな風に変化し、あるいは加速していくのかだろうか。そして、それはASEAN地域の動きの縮図のようにも見え、いよいよバンコク国際モーターショーが楽しみだ。

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