レストア済みのフルオリジナルモデルの評価は高い
2024年8月15日〜17日にRMサザビーズがアメリカ・モントレーで開催したオークションにおいてBMW「3.0 CSL」が出品されました。これはイタリア市場に輸出されて以来、すべての歴代所有者が判明している貴重な個体でした。ここではあらためて、車両の解説と落札価格をお伝えします。
モータースポーツで活躍した3.0 CSL
スポーティなキャラクターを、ブランド・バリューのコアとするBMWにとって、モータースポーツは最も効果の高い宣伝材料であることはいうまでもない。これまでもさまざまなレーシングカーやエンジンを、世界のサーキットに投じてきたBMW。その中でも最も大きな成功を収めた1台として、今でも多くのファンの心に残るのは、1970年代半ばに、当時のツーリングカー選手権に投入された「3.0 CSL」の活躍ではないだろうか。
3.0 CSL(クーペ・スポーツ・ライト)のベースとなったのは「3.0 CS」。それをもとに徹底的な軽量化を図った3.0 CSLの開発は、アルピナの主導で行われた。BMWが正式にアルピナへと開発を指示したのは1970年10月のこと。翌年3月には早くもアルピナはその基本仕様を決定した。3.0 CSから、じつに215kgも軽量な1165kgの重量を実現している。CSLというネーミングが正式に決定したのは、正確にはこの仕様が決定してからの話だった。
アルピナはさらに軽量版の14インチ径アロイホイールや軽量化されたコンポーネント、ビルシュタイン製のダンパー等々をBMWに納入。そして最初の3.0 CSLは169台が生産されたのである。搭載されたエンジンは、2985ccの直列6気筒SOHC。最高出力は180psの設定だったが、もちろんレースに投じられたモデルはさらに強力な仕様であったのは当然だ。
1972年になると、3.0 CSLはさらに戦闘力を高めるために正常進化を果たすことになる。一般的にはシリーズ2と呼ばれるモデルがそれで、最大の特徴は搭載された直列6気筒SOHCエンジンが3003ccへと排気量拡大されたこと。最高出力は200psに増強され、このような機械的な進化はカルマン社製のボディワークの持つエアロダイナミクスの改良による相乗効果もあり、さらにその戦闘力を高みへと導くことに成功した。
1973年には排気量を3498ccに拡大。またレース用のモデルではDOHC 24バルブの3498ccエンジンを搭載するなど、ツーリングカー選手権制覇に向けての積極的な姿勢を見せるが、実際にドイツ・ツーリングカー選手権、FIAグループ5イベント、アメリカIMSAキャメルGTシリーズなどで、BMWは圧倒的な強さを見せるメイクスへと急速に変貌したのである。
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シャシー&エンジンナンバーも新車時のまま
今回RMサザビーズのモントレー・オークションに出品された3.0 CSLは、1972年式のシリーズ2。BMWによればイタリア市場に輸出されて以来、すべての歴代所有者が判明している貴重なモデルである。付属のBMWクラシック証明書に記載されているとおり、シャシーナンバーやエンジンナンバー等は、すべて新車時のまま。
インテリアの仕様もブラックレザーに工場出荷時の正しいタイガ・メタリックの組み合わせで仕上げられている。これは現在までの間に、オランダの有名なBMWブランドの専門業者、オルデンツァール・クラシックスによる本格的なレストア作業を受けたためで、それにかかった費用は25万1000ユーロ(邦貨換算約3920万円)以上の領収書もきちんと残されている。アルミニウム製のボディパネル、アルピナ製の20本スポーク・アルミホイール、シート、エアコンなどは、すべてオリジナルのままだ。
気になるエスティメート(推定落札価格)は、25万ドル〜30万ドル(邦貨換算約3700万円〜4440万円)だった。実際のハンマープライスは、20万1600ドル(邦貨換算約2949万円)という価格で落札された3.0 CSL。エスティメートには届かなかったが、ひところより明らかに高価になったことは確かだ。