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シンガーが再創造したポルシェ「911」は1億円はくだらない…!? 1台1台オーダーメイドで作られる芸術品の細部とは?

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TEXT: 山崎元裕(YAMAZAKI Motohiro)  PHOTO: 2024 Courtesy of RM Sotheby's

カラーリングや職人の手仕事によるフィニッシュは感動的

ここで紹介するデンマーク・コミッションは、2017年12月にデンマーク人カスタマーのためにレストアされたもの。シンガーは同様のレストアを、450台を上限として受注したが、2022年6月には新規受注は中止されるほど、その人気は高かった。デンマーク・コミッションには、依頼者の厳格な好みに応えるために、数々の素晴らしいシャシーのアップグレードが施されている。とくに注目されるのはオリジナルのフレームがすべて完全にシーム溶接されていることだろう。

一方リアに搭載されるエンジンは、同じカリフォルニア州ヴァンナイスのエド・ピンク・レーシング・エンジンズと共同製作された3.8Lの水平対向6気筒エンジンが350psの最高出力で搭載されている。ちなみにこのエンジンは、ブロックは964型911用のものだが、ピストンやシリンダー、シリンダーヘッド、クランクシャフト、カムシャフト、コネクティングロッド、オイルポンプ、スロットルボディ、吸気システムなどは、すべて独自に開発されたものとなる。組み合わされるトランスミッションは6速MT。リアディファレンシャルにはLSDが採用され、ブレーキにはブレンボ製の大型ブレーキアップグレードパッケージが備わる。

シンガー独自仕様のオーリンズ製サスペンションを装着

インテリアにはオプションの8方向電動調節式レカロ製スポーツシートが2脚装備され、さらにブラックを基調としたカラーリングや職人の手仕事によるフィニッシュは感動的なものでさえある。さらにこのモデルには、現代的なエアコンシステムをはじめ、オプションの電動サンルーフ、取り外し可能なサブウーファー付きのAudison製オーディオシステム、そしてシンガー独自仕様で設計されたオーリンズ製の調節可能なサスペンションシステムも搭載されている。また出品者である現在の所有者は2023年にデンマーク・コミッションを購入し、オイル交換とニュータイヤの取り付けを行った。

シンガーの製作したモデルが、いわゆる二次市場で入手可能になった例は、創業以来ほとんどその例がないという。つまり市場での希少性はきわめて高く、それはRMサザビーズが設定した90万ドル〜120万ドル(邦貨換算約1億3163万円〜1億7551万円)というエスティメート(予想落札価格)にも反映されていた。

走行距離もシンガーでの作業を受けて以来わずかに5700kmというモデルだったのだが、今回は残念ながら、このデンマーク・コミッションは落札には至らなかった。とはいえシンガーの存在感は911ファンの間では圧倒的。さらに人気は高まりを見せるのは確実と考えてよいのではないだろうか。

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