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シンガーが再創造したポルシェ「911」は1億円はくだらない…!? 1台1台オーダーメイドで作られる芸術品の細部とは?

90万ドル〜120万ドル(邦貨換算約1億3163万円〜1億7551万円)で現在も販売中のポルシェ「911 リイマジンド byシンガー」(C)Courtesy of RM Sotheby's

同じモデルは2台とないシンガーポルシェがオークション登場

2024年8月15日〜17日にRMサザビーズがアメリカ・モントレーで開催したオークションにおいてポルシェ「911 リイマジンド byシンガー」が出品されました。同車は、2017年12月にデンマーク人カスタマーのためにレストアされたもの。シンガーは同様のレストアを、450台を上限として受注しましたが、2022年6月には新規受注が中止されるほど人気のあるモデルでした。

エキゾチックな個性を絶妙にブレンドさせた魅惑的なモデル

ローマレッド・メタリックと、手織りのブラックレザー&スウェードインテリアによる、素晴らしいカラーコンビネーションを見せるポルシェ「911」。デンマーク・コペンハーゲンの、のどかなインデ・パイ地区の赤い屋根や、レンガ造りの街並みにインスピレーションを得たとことから、「デンマーク・コミッション」とネーミングされたそのモデルは、ポルシェ911の伝統とともに予想をはるかに超えたエキゾチックな個性を絶妙にブレンドさせた魅惑的な雰囲気を持つモデルに仕上げられている。

ベースとなったのは1990年式のポルシェ911。毎日の通勤から、ル・マン24時間レースでの表彰台フィニッシュまでをもこなす911は、その熱狂的なファンたちからは「911に克服できない課題はない」とまで主張される存在だ。

ポルシェファンを魅了するシンガーとは

その911の伝統の中で、とりわけ空冷式911の時代を徹底的に細部にまでこだわり、大切に受け継いでいる会社は、カリフォルニアのシンガー・ビークル・デザイン社をおいて他にはないだろう。

2009年にロサンゼルスで創業したシンガーは、ポルシェ911のオーダーメイドによるレストアで世界的な名声を得るようになり、さらに964型911をベースに1台1台を丹念に修復、そして再創造することにビジネスの主軸を置くようになった。

「911がデビューを飾った1963年当時のオリジナルの繊細さ、1970年代のレースで鍛えられたシックな感覚、1980年代の堅牢さ、そして1990年代の洗練さなどを、宝石のような特別なクルマとして再創造する」

それが彼らの企業哲学だ。

シンガーが再創造した911は、それぞれのカスタマーの好みによってカスタマイズされたオーダーメイド品であり、同社の非常にパーソナルな注文品には2つとして同じものは存在しない。同社の品質、エンジニアリング、そして細部に至るまでのこだわりは、そのレストア、再創造の作業を伝説的なものとし、多くのポルシェ・コレクターやレーシングドライバー、ハリウッドセレブも、シンガーのカスタマー・リストにその名を連ねている。現在では数年先までシンガーでの作業は予約待ちの状態だ。

カラーリングや職人の手仕事によるフィニッシュは感動的

ここで紹介するデンマーク・コミッションは、2017年12月にデンマーク人カスタマーのためにレストアされたもの。シンガーは同様のレストアを、450台を上限として受注したが、2022年6月には新規受注は中止されるほど、その人気は高かった。デンマーク・コミッションには、依頼者の厳格な好みに応えるために、数々の素晴らしいシャシーのアップグレードが施されている。とくに注目されるのはオリジナルのフレームがすべて完全にシーム溶接されていることだろう。

一方リアに搭載されるエンジンは、同じカリフォルニア州ヴァンナイスのエド・ピンク・レーシング・エンジンズと共同製作された3.8Lの水平対向6気筒エンジンが350psの最高出力で搭載されている。ちなみにこのエンジンは、ブロックは964型911用のものだが、ピストンやシリンダー、シリンダーヘッド、クランクシャフト、カムシャフト、コネクティングロッド、オイルポンプ、スロットルボディ、吸気システムなどは、すべて独自に開発されたものとなる。組み合わされるトランスミッションは6速MT。リアディファレンシャルにはLSDが採用され、ブレーキにはブレンボ製の大型ブレーキアップグレードパッケージが備わる。

シンガー独自仕様のオーリンズ製サスペンションを装着

インテリアにはオプションの8方向電動調節式レカロ製スポーツシートが2脚装備され、さらにブラックを基調としたカラーリングや職人の手仕事によるフィニッシュは感動的なものでさえある。さらにこのモデルには、現代的なエアコンシステムをはじめ、オプションの電動サンルーフ、取り外し可能なサブウーファー付きのAudison製オーディオシステム、そしてシンガー独自仕様で設計されたオーリンズ製の調節可能なサスペンションシステムも搭載されている。また出品者である現在の所有者は2023年にデンマーク・コミッションを購入し、オイル交換とニュータイヤの取り付けを行った。

シンガーの製作したモデルが、いわゆる二次市場で入手可能になった例は、創業以来ほとんどその例がないという。つまり市場での希少性はきわめて高く、それはRMサザビーズが設定した90万ドル〜120万ドル(邦貨換算約1億3163万円〜1億7551万円)というエスティメート(予想落札価格)にも反映されていた。

走行距離もシンガーでの作業を受けて以来わずかに5700kmというモデルだったのだが、今回は残念ながら、このデンマーク・コミッションは落札には至らなかった。とはいえシンガーの存在感は911ファンの間では圧倒的。さらに人気は高まりを見せるのは確実と考えてよいのではないだろうか。

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