強気なエスティメートが影響した……?
いっぽうインテリアに目を移すと、シートは手縫いのネイビーレザーとタータンクロス柄ファブリックのコンビ。これは、オリジナルの300SLRへのオマージュである。また、フロアにはグレーのカーペットが敷かれ、その両端およびサイドパネルはダイヤモンドキルト仕上げのレザーで設えられている。
ステアリングホイールは、4本スポークのポリッシュアルミ。くわえて「722」300SLRを特徴づけていたエアロスクリーンは、プレキシグラスで再現されている。
ボナムズ社の公式ウェブカタログには、製作したコンストラクターに関して特記されてはいないようだが、いわく「スターリング・モス自身が署名したプラークを特徴とする数少ない『ハーフスケール』作品の1つ」とのこと。つまり、昨今この種のジュニアカー業界において意欲的な作品を続々と生み出している「ハーフスケール」ブランドのプロダクトということである。
ちなみに、まだ世界がコロナ禍にあった2021年5月に、ライバルであるRMサザビーズ社がインターネットのオンライン限定で開催したオークション「OPEN ROADS, MAY」では、同じくハーフスケール社製の300SLRジュニアカーが、そもそも5000~1万英ポンドという、かなり安価なエスティメート(推定落札価格)とともに出品。実際のオンライン競売では1万800英ポンド、当時のレートで日本円換算すれば約168万円で落札されたセールス実績がある。
いっぽう「The Quail 2024」オークションへの出品に際して、ボナムズ社は4万ドル~6万ドル(邦貨換算約610万円〜約920万円)という、どう見ても強気に映るエスティメートを設定していた。
しかし、この出品ロットは「Lot to be sold without reserve(最低落札価格なし)」とされていたにもかかわらず、実際に行われた競売では売り手側と入札希望者の思惑があまりにも乖離していたのだろうか、残念ながら「Not Sold(流札)」に終わったようだ。