前オーナーの遺志を受け継ぎ新車時のナンバーを維持
2024年10月20日に埼玉県川島町役場にて今年で4回目となる「昭和平成なつかしオールドカー展示会」が開催され、300台を超えるクラシックカーが集結しました。そんな会場で見つけた気になる車両とオーナーをピックアップ。今回は古い「千4」ナンバーを掲げた日産初代「セドリックバン」を紹介します。
13年の眠りから覚めた究極のサバイバー
ダットサンクラブの方に「すごいクルマがあるよ」と紹介してもらったのが、美しいグリーンツートーンのボディに「千4」という古いライセンスプレートを掲げたこの1964年式の日産「セドリックバン」だ。初代セドリック自体が珍しいなかで4ナンバーのバンは、現存するだけでも珍しい存在。オーナーの塚本さんに話を伺った。
「このクルマは初代オーナーが長らく乗っていたんですがお亡くなりになって、その後は車庫にずっと眠ってたそうです。それが今から13年前に車庫を壊すことになってクルマを手放すことになり、その際に縁あって譲っていただくことになりました。ちなみに新車当時のナンバーもそのまま引き継がせてもらうことになりました」
日産初の純国産中型乗用車、初代セドリックのバンタイプ
初代セドリックは、それまでオースチン系車両のノックダウン生産を行なっていた日産が初めて製造した純国産の中型乗用車として1960年にデビュー。フロントにラップラウンド・リアウインドウを採用するほか、リアのクオーターウインドウもカーブドガラスを採用するなど、ボディ各所はアメリカ車に大きな影響を受けたデザインで、当時としては大きなボディと相まってタクシーやハイヤー、パトカーなどにも採用された。
なかでもバンは全長4690mm×全幅1690mmといわゆる5ナンバーフルサイズのボディ。フロントがベンチシートなので、後席と合計して乗車定員6名と大量の荷物を搭載することができるマルチパーパスな1台。数年遅れてワゴンも登場するが、ワゴンと同等の性能を持ちワゴンより安価だったバンは隠れた人気モデルとなったのだ。
本来バンのグリルはグレーのペイント仕上げとなるが、このクルマはセダンやワゴン同様のクロームメッキ仕様に変更している。ちなみにバンパーやホイールもグレーやアイボリーペイントのイメージだが、セドリックバンはクロームメッキが標準となるそう。また西陣織を採用したセダンやワゴンのシートが有名だが、バンもビニールレーザーをメインに西陣織を一部アクセントとして採用している。バンとはいえ、かなりの高級車だったことが窺えるのだ。
長年眠っていた車両を直して路上復帰を果たす
塚本さんが譲り受けた際には当然不動だったため、エンジンはもちろんブレーキを直したうえで、ボディも元色でリペイントしてレストア。こうして無事路上復帰を果たすことができた。現在はエンジンも絶好調で、高速を100km/hで巡航でき、乗っていても不自由を感じないそうだ。
その後大きなトラブルはないそうだが、ボンネットオープナーのワイヤーが切れてしまったため、自転車のワイヤーを流用して修理しているそう。またレストアから年月が経過したこともあって、今年ロアカラーのみ再度リペイントをしているそうだ。ちなみにフロントバンパー左側に装着されているコーナーポールは、ポール本体よりも初代セドリック用の装着ステーが貴重品で、かなり珍しいという。
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)