劣化したブレーキフルードは危険
記録的な暑さだった2024年の夏。ようやく涼しくなってきたとはいえ、人もクルマも、この暑さによるダメージが表面化してくるのは、秋らしくなってきた頃といえます。そんな今の時期にチェックしておいてほしいのが、「ブレーキフルード」です。
沸点の低いフルードは沸騰で気泡が生じることも
油圧のディスクブレーキは、ブレーキペダルを踏むとマスターシリンダーが動き、リザーバータンクにあるブレーキフルードが高圧で流れ出す。それがブレーキキャリパーまで届き、ピストンを押し出し、パッドがローターを挟み込むことで制動力を発揮する。
つまり、このブレーキフルードの流れが、ブレーキをかけることと、ブレーキをリリースすることのすべてを担っているというわけだ。
このブレーキフルードは、グリコール系の熱に強い液体で、一般的なDOT3の製品で新品時の沸点は205℃以上。サーキットなどを走らなくても、山道などでブレーキを多用すると、ローター温度が300℃を超えることも珍しくない。ローターやパッドが高温になるとキャリパーを通してブレーキフルードの温度も上昇してくるため、沸点の低いフルードだと沸騰し、気泡が生じる可能性が出てくる。
フルードの中に気泡が混じると、ブレーキペダルを踏んでも、その気泡がつぶれるだけでフルードが流れず、ブレーキが利かないという恐ろしい状態に……。これがいわゆるペーパーロック現象だが、厄介なことに、高温に強いブレーキフルードも吸湿性が高いという欠点がある。
ブレーキフルードは2年に1度交換する
湿気とはすなわち沸点100℃の水のため、フルードが湿気を吸いはじめると、フルードの沸点も徐々に低下してしまう。使い方にもよるが、新品時に200℃以上の沸点だったフルードも、1〜2年経つと湿気が混じり、沸点は140℃ぐらいまで落ちてしまう。
前述のとおり、峠道などでブレーキを酷使し、ローター温度が300℃ぐらいになると、キャリパーを通して熱が伝わり、フルードの温度も200度近くに上昇することがあるので、劣化したフルードでは、ペーパーロック現象を起こして、ブレーキがスポンジーになり、ペダルを踏んでも制動力が立ち上がらないリスクが出てくる。
したがって、ブレーキフルードは2年に1度、車検ごとに交換するのが基本。日本の夏は高温多湿のため、熱を吸収しやすく、吸湿性の高いブレーキフルードは、2回夏を越したらもうヘロヘロといっていい。早めにブレーキフルードを交換したほうが安心だ。
ブレーキフルードの劣化具合は目視できる
なお、ブレーキフルードの劣化具合は、ある程度目視でも確認できる。
ボンネットを開け、ブレーキのリザーバータンクを見てみよう。フレッシュなブレーキフルードはほぼ無色透明だ。それが熱で劣化し、空気中の水分を含んでくると、透明度が下がってきて、だんだん赤みを帯びてくる。それが濃くなり赤というより紅茶のような茶色になってきたらもう限界。すぐにブレーキフルードを交換しよう。
もしそれを放置しておくと、フルードは廃油のような濃い色になり、ペーパーロック現象が起きやすくなるだけでなく、ブレーキマスターシリンダーに錆が発生したり、キャリパーのピストンが固着するなどして、高い修理代を支払うことにもつながってくる。ブレーキフルードの交換費用は、工賃込みで5000円〜7000円が相場だ。
ブレーキは安全に直結している部分なので、走行距離にかかわらず、2年に1度、車検ごとにはブレーキフルードを交換するようにしたい。
またMT車のオーナーは、クラッチフルードもブレーキフルードと一緒に交換すること。クラッチフルードは専用フルードがあるわけでなく、ブレーキフルードをクラッチにも利用しているだけ。熱の影響こそ、ブレーキほど厳しくはないが、湿気の影響は変わらない。クラッチフルードも劣化すると気泡が入り、クラッチペダルを踏んでもクラッチが切れなくなることがあるので、クラッチフルードとブレーキフルードは同じタイミングで交換しておくと安心だ。