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いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します

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TEXT: 佐藤 圭(SATO Kei)  PHOTO: AMW

  • ブレーキローターの温度は、街乗りでも100℃を超えるのが当たり前で、サーキットなら700℃に達するケースも珍しくない
  • 短い時間で減速させるブレーキは摩擦により相当な熱が発生する
  • 安全性にもっとも大きな影響を及ぼす項目がブレーキだ
  • ブレーキローターはパッドと同じく走るほど摩耗するパーツなので、定期的な交換が必要だ
  • 意外と知らない人も多いのがローターのディスク形状だ
  • ベンチレーテッドディスクの間には「フィン」と呼ばれるモノがあり、その形状や数によってもローターのクーリング能力は大きく変わってくる
  • ソリッドディスクは、1枚のディスクだけで構成されるローター

ブレーキローターの構造とそれぞれの利点

クルマの基本性能といわれる「走る・曲がる・止まる」で、安全性にもっとも大きな影響を及ぼす項目がブレーキです。パッドやキャリパーなどさまざまなパーツで構成されますが、意外と知らない人も多いのがローターのディスク形状。あらためて説明をしていきます。

冷却のベンチレーテッドと軽さのソリッド

ブレーキパッドでブレーキローターを挟み込んでスピードを落とすという仕組みは同じながら、ローターの形状は「ベンチレーテッドディスク」と「ソリッドディスク」に大別できる。現在のクルマに多く採用されているのはベンチレーテッドディスクで、とくにブレーキの負担が大きいフロントは、ほぼこのタイプと考えていい。

ベンチレーテッドディスクはふたつの鉄板を合わせた形状で、ディスクの間に風を通すことでローターを効率よく冷却する。時には100km/hを軽く上まわるスピードで走る鉄の塊であるクルマを、短い時間で減速させるブレーキは摩擦により相当な熱が発生するのだ。

サーキットの耐久レースでブレーキローターが熱を帯び、真っ赤になったシーンを見たことがある人もいるだろう。その温度は街乗りでも100℃を超えるのが当たり前で、サーキットなら700℃に達するケースも珍しくない。そんな状態ではどんな高性能なブレーキも本来の性能を発揮できず、フェード現象やベーパーロック現象といったトラブルを引き起こす。

だからこそ走行中も断続的にローターを冷やすことが大切で、そのために有効なのがベンチレーテッドディスクというわけだ。もっとも連続で全開アタックを続けていれば、放熱が追い付かない可能性も十分にあり得る。そんなときはローターの径を大きくして表面積を増やす、もしくはダクトを引いて風をさらに当てるという手もアリ。

なおベンチレーテッドディスクの間には「フィン」と呼ばれる部分があり、その形状や数によってもローターのクーリング能力は大きく変わってくる。もっとも多く採用されるのはストレート式のフィンで、数が少ないほど軽く、多いほどローターの剛性が高くなる。いずれにせよ純正品はパワーや車重から必要なローター径やフィンの数を算出し、クルマ全体のバランスがもっともよくなるように設計されていると考えていい。

軽さや価格などソリッドならではのアドバンテージもある

もうひとつのソリッドディスクは、1枚のディスクだけで構成されるローター。想像できるとおり放熱する能力はベンチレーテッドに及ばず、ローパワー車や軽量なクルマのリアに多く採用されている。しかしながら軽さや価格などソリッドならではのアドバンテージもあり、とくにブレーキはいわゆるバネ下となるので軽量化は武器といえるだろう。

ミッドシップのような特殊なレイアウトは別として、一般的にブレーキへの依存度は「フロント>リア」だ。何もかも高性能なベンチレーテッドディスクが有利なわけじゃなく、クルマの特性や使い方に合わせたケース・バイ・ケースが大切なのだ。

最後になったが、ブレーキローターはパッドと同じく走るほど摩耗するパーツで、どれだけ高性能な製品であっても定期的に交換しなければいけないことも忘れずに。

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  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 佐藤 圭(SATO Kei)
  • 1974年生まれ。学生時代は自動車部でクルマ遊びにハマりすぎて留年し、卒業後はチューニング誌の編集部に潜り込む。2005年からフリーランスとなり原稿執筆と写真撮影を柱にしつつ、レース参戦の経験を活かしサーキットのイベント運営も手がける。ライフワークはアメリカの国立公園とルート66の旅、エアショー巡りで1年のうち1~2ヶ月は現地に滞在。国内では森の奥にタイニーハウスを建て、オフグリッドな暮らしを満喫している。
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