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約3000万円で落札されたポルシェ「911 カレラRS アメリカ」は何か変! 実は新車の頃からシュトロゼックのボディキットが装着されていました

約3000万円で落札されたポルシェ「911 カレラRS アメリカ」は何か変! 実は新車の頃からシュトロゼックのボディキットが装着されていました

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

懐かしい「シュトロゼック」のフルキット車は、中東の王子様がオーダー

この夏、ボナムズ社の「The Quail 2024」オークションに出品された964 カレラRS アメリカは、「ガーズレッド」レッドのボディにブラックのインテリアという象徴的なカラーコンビネーションで仕上げられた、アメリカ合衆国マーケット向けの1台。バーレーンの王子のひとりが新車で購入した、と伝えられている。

また、2008年に「シュトロゼック・デザイン」社のマリータ・ノイマン女史から前オーナーに送付されたEメールによると、この964 カレラRS アメリカには新車に近い時期からシュトロゼックの「バージョンI」ボディキットが装着されていたという。

このボディキットは、フロントバンパーにサイド/リアのスカート、リアウイングフード、左右ドアミラー、スポーツエグゾースト、モノブロック17インチホイールによって構成されたもので、前述のノイマン女史は「944ターボのウインカーが付いた非常に珍しいフロントバンパーセクションは、私もお気に入りです」とメール内で記述している。

登録および保険の書類から、このカレラRS アメリカは1993年から1994年までバーレーンにあったことが判明している。王子はこのクルマを、のちに2代目オーナーとなる彼の友人で石油王のアンソニー・リスターに譲渡した。口頭で継承されたヒストーによれば、シェイクはリスターにこのRSアメリカを売り込む際に、公道を封鎖して、180mph(約290km/h)で走ることができると証明してみせたという……!

魅力的なヒストリーを持つ964 RSアメリカ

オークション出品にあたって添付されたファイルに含まれていたドキュメントによると、リスターは少なくとも2006年まで所有していたそうだが、そののち友人に売却した可能性があり、最終的には2010年に前オーナーが「コイズ・オブ・ケンジントン」社のオークションで購入するに至った。

それからさらに13年後、約1年前に今回の出品者でもある現オーナーが入手。現在では高品質なペイント修正とセラミックコーティングが施されている。さらに直近ではオイルとフィルターが交換され、新品のハンコック社製タイヤも履き替えられたばかりという。

また、北米モンタナ州での登録書類とともに、純正ツールロールと2本の専用キー、警告灯、ボディキットのアップグレードを確認するシュトロゼック・デザイン社からのEメール、「RSアメリカ」としてのレジストリー・データベース文書、米国内MoT車検書、バーレーン時代の登録書類にラミネート加工されたバーレーン国内の保険証書などにくわえて、これまで行われたメンテナンスの請求書と履歴ドキュメントを収めたフォルダも車両に添付しており、これらはすべて落札者に引き渡されるとのことだった。

「この素晴らしく、ユニークで、走行距離の少ない、魅力的なヒストリーを持つ964 RSアメリカは、その名の由来となった国で、オープンロードを探検する準備が整いました」。そんなPRの一文を添えて、ボナムズ社は17万5000ドル~27万5000ドル(邦貨換算約2590万円〜約4070万円)というエスティメート(推定落札価格)を設定していた。

そして迎えたオークション当日の競売では19万3200ドル、日本円に換算すれば約2960万円での落札となったのだが、このハンマープライスは現在における欧州向け964 カレラRSの相場価格よりは、若干ながら安価といえる。

とはいえ、新車の時代から並行輸入で日本にやってきた964 カレラRS アメリカは、当時の「ミツワ自動車」が輸入した正規物のカレラRSよりもおおむね安価で販売されていたこと、あるいはそののちのユーズドカー市場でも、欧州向けオリジナルRSよりはリーズナブルな価格で推移していたことを考慮すれば、今回の落札価格も納得のゆくものだったのではないだろうか……。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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