あらためてアメリカの広さを実感
世界の自動車博物館を巡ることをライフワークとしている原田 了氏。2024年夏の旅では北米の自動車博物館を取材することができました。第2弾は、「ペンスキー・レーシング博物館」と「マーティン自動車博物館」をご紹介。今回はどんなクルマと出会えたのでしょうか。早速お伝えします。
ペンスキー・レーシング博物館を訪問
ロサンゼルスを起点に1カ月の大旅行となった夏の北米自動車博物館探訪ツアーでは、ロサンゼルス空港に到着したその日に早速、ホンダ「シビック タイプR」のショートインプレッションを兼ねてピーターセン自動車博物館(The Petersen Automotive Museum)を訪れたことは前回にご紹介した通り。
その翌日、朝一番でアメリカン・ホンダ、通称「アメ・ホン」の本社にシビック タイプRの広報車を返却し、いよいよ大旅行が始まった。この日はロサンゼルスから130マイル(約210km)ほど南のサンディエゴにある博物館を2つ取材した後に220マイル(約350km)ほど東進して投宿。
翌朝は10時半に出発してフェニックスにあるペンスキー・レーシング博物館(Penske Racing Museum)を訪ねた。出発前には12時に到着する予定だったが、こちらはテキサス州の州都、フェニックスにあって、ホテルのあったカリフォルニア州とは1時間の時差があり、予定通り順調なドライブだったが現地到着は午後1時になってしまった。
オリジナルのインディカーやF1マシンが勢ぞろい
近年ではポルシェとジョイントして世界耐久選手権(WEC)での活躍で知られるチーム・ペンスキーだが、主に北米を舞台に戦われてきたトップフォーミュラのCART/インディカーでも数々の好成績を残す強豪チームとして、その名を轟かせてきた。その一方でチーム創設者のロジャー・ペンスキーはF1GPにドライバーとして参戦した後、ドライバーから引退すると事業に注力。クルマのディーラーやトラックのリース事業を手がけてペンスキー・コーポレーションを世界的にも屈指の企業に育て上げている。
その豊富な資金力をバックにチーム・ペンスキーは、CART/インディカーやストックカー(NASCAR)のウィンストンカップ・シリーズ、スポーツカーレースのCan-Amなど北米におけるさまざまなモータースポーツで活躍。1970年代にはオリジナルマシンを製作してF1GPにも挑戦している。
ペンスキー・レーシング博物館は、ジャガーやベントレー、あるいはランボルギーニなどのディーラーが軒を並べるビルの一角にあって、歴代のCART/インディカーのチャンピオンカーやインディ500マイルの勝者(車両)に加えて、栄光のストックカーも展示されていた。個人的には1970年代のペンスキーPCシリーズ、とくに赤・白・青のファースト・ナショナル・シティ銀行カラーに塗られた1974年のF1GPカー、「PC-1」に出会えたことが印象的だった。
時差を考えていなくて、予定よりも到着が1時間遅れたものの、ペンスキー・レーシング博物館が、思っていたほどには収蔵台数が多くなく、1時間ほどで取材を終えることができ、次の目的地であるマーティン自動車博物館(Martin Auto Museum)に向かう。
マーティン自動車博物館は引っ越し済み! 戸惑いながら到着
こちらマーティン自動車博物館はペンスキー・レーシング博物館から15マイル(約24km)程度で、20分も走れば到着する至近距離にあったのだけれど、工業団地風のエリアに辿り着いてみると、そのハウスナンバー(国内でいうと番地に相当)の箇所には何もない。そこでお隣のオフィスに飛び込んでマーティン自動車博物館に行きたい旨を伝えると「引っ越したわよ」との素っ気ない台詞が返ってきた。
しかし、その受付嬢は親切にも引っ越し先をネット検索し、新しい住所を調べてくれた。もちろん彼女はこちらの貧しい英語力を知るはずもなく、ペラペラと喋った最後に「マクドナルドの近くだわよ」と追加してくれた。こうなると日本から持参した愛用のポータブルナビの出番だ。
fast food(ファストフード)→McDonald(マクドナルド)と入力して目的地検索すると、付近にあるマクドナルドを表示してくれるのだ。その候補の中から一筆書きの要領で3つほどのマクドナルドを選んで訪ねて行くと、2番目のマクドナルドの隣にある博物館を発見。旧住所から6マイル(約10km)、クルマで10分程度。ロスタイムは最小限に抑えられ、予定より少し遅れただけでマーティン自動車博物館の取材を始めることに。
予想していた以上に収蔵展示車両が多かった……
しかしこのマーティン自動車博物館は、予想していた以上に収蔵展示車両が多かった。とりあえず写真撮影だけでもと思い、駆け足で1台ずつ撮影し、これまでに各地の博物館で何度も撮影してきたモデルは端折りながら撮っていったのだが、とりわけ興味を持っていたモデルだけをピックアップ。
例えば戦前から戦後にかけてコンパクトカーを生産したことで知られるクロスレーの幾つかのモデルが勢揃いしていたコーナーでは展示パネルに見入ったりして時間がかかったせいもあるけれど、午後5時の閉館時間までには全モデルを視て回ることは叶わず「時間だよ」と声かけられながらも「あと少し、あと5分だけ」と懇願しながらも、最後には20数台を残して撮影終了となった。
時差を考えずに取材スケジュールを組んで、朝は午前10時発とゆっくりホテルを出発したのが悔やまれるが、後悔先に立たず。さらにこの後は翌日の取材に向けて320マイル(約510km)ほど離れたホテル目指してのロングドライブが控えており、後ろ髪引かれる思いで博物館を後にした格好だ。
もっと近くのホテルに泊まったら、とも言われそうだが明日は明日でホテルから150マイル(約240km)ほど離れた博物館を取材する予定だったのでそれも叶わなかった。限られた時間の割に取材先が多すぎたのもあっただろう。いずれにしてもアメリカ(大陸)の広さを実感した次第。ということでマーティン自動車博物館と、その収蔵車両については、時を改めて詳しく紹介することにしよう。