「羽根ベン」と呼ばれるW111を普段使いに楽しむ
メルセデス・ベンツの縦目ヘッドライトは、マニアの間では「タテベン」と独特の愛称で親しまれました。これらは1950年代から1970年代初頭まで生産されたW108/109/111/113/114/115といったモデルを指します。今回紹介する貫録と威厳に満ちあふれるスタイルのメルセデス・ベンツも縦型ヘッドライトが特徴ですが、このモデルは「タテベン」とは呼びません。その理由は独特なテール形状にありました。
特別な存在だった羽根ベン
メルセデス・ベンツマニアの間では「タテベン」とも呼ばれていた縦目ヘッドライトとは別に「ヨコベン」の愛称で親しまれたモデルもあり、これは後に登場する「W116」、「123」といった世代のヘッドライトが横長になったモデルのことをいう。今回紹介するメルセデス・ベンツは1959年に登場した「W111」で、通称「羽根ベン」の愛称で現在も多くのメルセデスファンに親しまれている。この羽根ベンは、1950年代にアメリカで流行した羽根のようなテールフィンを採用したモデルの登場によってついた呼び名で、正式には「マーカー」と呼ぶ。このマーカーモデルは、美しく整ったエレガントなフォルムとともに、フィンテールが車体の見切りの悪さを解消する機能を兼ね備えたデザインである点でも注目された。
そんな羽根ベンの持ち主は、愛媛県在住の瀬尾 晃さん(73歳)。愛車は1965年式のメルセデス・ベンツW111型「220SE」である。自宅にはさまざまな旧車をコレクションする瀬尾さんは、国産旧車はもちろん古い外車の収集も好きで、とくにオールドメルセデスには特別な想いがあると話す。
「昔から高級車としての代名詞だったので、いつかはメルセデス・ベンツに乗りたいという考えをずっと持っていました。そのなかでも自分にとって羽根ベンは特別で、オールドベンツなら何でも良いわけではなく、このフィンテール時代のモデルしか興味がないのです」
ドイツ本国から取り寄せた新品パーツに交換、修復してレストア
このクルマを見つけた先は、某オークション会場だった。よく調べると出品者が知り合いだったため、そのオークションを流し、友人から直接購入。傷んだ箇所をすべて綺麗に修復するためにレストア作業をスタートさせる。必要なパーツについては、ドイツ本国に問い合わせて調達。細かな部品であっても、日本とは違ってパーツの調達が容易であった。燃料タンクが腐っていて使い物にならなかったが、これも純正品に交換。さらに、各サスペンションアームのブッシュやエンジンマウントといった細かい部品も含めて、すべて用意することができきた。
長年、国産旧車のレストアに携わり、困った経験をたくさん持つ瀬尾さんにとって、このメルセデスの対応能力は素晴らしいと話す。ただ、この羽根ベンのレストアは部品の調達については何ら問題なく新品パーツが手に入ったので良かったが、一番ネックだったのが値段がそれぞれ高いことだった。
正直、お金をかければいくらでも修復可能で、今よりも綺麗にすることができるが、それをやりはじめるとキリがないという。それでも、前のオーナーもこのクルマにだいぶお金をかけて、瀬尾さんが受け継いでからも新品パーツに交換し、修復を進めたかいあって、現状は程度が良いレベルに。そのため、走りに関しても絶好調だから、これ以上は今のところ望まないという。
この羽根ベンは博物館に展示されるようなモデルだが、瀬尾さんは普段の買い物にも使っているという。数多く所有する旧車の中でも、頻繁に乗って楽しむクルマがこれなんだとも説明してくれた。
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)