クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB

クルマを文化する
REAL CAR CULTURE

AUTO MESSE WEB(オートメッセウェブ)

  • TOP
  • LIFE
  • 日産が93.5%の大幅減益! ハイブリッドの急速な伸びを読めなかったのは庶民感覚が欠けていたから…「技術の日産」の復活を望みます【Key’s note】
LIFE
share:

日産が93.5%の大幅減益! ハイブリッドの急速な伸びを読めなかったのは庶民感覚が欠けていたから…「技術の日産」の復活を望みます【Key’s note】

投稿日:

TEXT: 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)  PHOTO: AMW

  • 充電中のリーフNISMO
  • 日産リーフ:初代に比べてスタイリッシュに仕立てられたエクステリア
  • 日産リーフ:爽やかなブルーも設定されている
  • 日産リーフ:ボディサイドにはゼロエミッションのエンブレムが装着される
  • 日産リーフNISMO:NISMOのノウハウを投入し電気自動車での走りの楽しさを追求している
  • 日産リーフNISMO:搭載するモーターユニット
  • 日産アリア:日産EVのフラッグシップとして君臨するアリア
  • 日産アリア:SUVらしからぬ走りを披露してくれる
  • 日産サクラ:軽自動車EVとして人気のサクラ
  • 神奈川県横浜市にある日産自動車本社
  • 電気自動車の悩みの種、充電器問題も要因のひとつか

完全EV化はハードルが高すぎたか

レーシングドライバーであり自動車評論家でもある木下隆之氏が、いま気になる「key word」から徒然なるままに語る「Key’s note」。今回のキーワードは「日産自動車の業績」についてです。日産自動車が発表した2024年4月から9月までの中間決算で、アメリカでの販売不振もあり90%の減益に。その理由などを解説します。

世界的にはハイブリッドの流れだが日産には……

「ハイブリッドが急速に伸びるのを読めていなかった」

日産の経営が揺らいでいます。2024年9月の中間連結決算は、最終損益が前年同期比で93.5%減の192億円に激減しました。対策として、世界で9000人を削減するリストラを発表、日産はグループを含めて13万人の従業員と家族を支えています。9000人削減はかなりの数字ですね。

日産本社

冒頭の言葉は、決算発表会の席で、内田 誠社長が口にした詫びのコメントです。

大企業の経営が簡単ではないことは誰にでも想像できることですが、このコメントに違和感を覚えた人も少なくないような気がします。

世界的なカーボンニュートラルの流れを受けて、走行中に(限って)いっさいのCO2を排出しないBEV(バッテリーエレクトリックヴィークル)が、地球温暖化を止める救世主のように崇められて久しいものの、最近では雲行きが怪しくなりましたね。

世界の多くのメーカーが、内燃機関を捨てて電気モーターに救いを求めたのですが、メーカーが期待するほどBEV化は進んでいません。BEV化戦略の撤回や延期、達成時期を遅らせるメーカーも現れました。ドイツはいち早く内燃機関との決別を推進した国ですが、やはり撤回、もしくは達成期間の延期を宣言しました。政府が朝令暮改、前言撤回するとは驚きでしたね。

ただし、僕のような平民は、そんなに急速に電動化時代になるとは想像していなかったような気がします。メーカーや政府が計画するほどBEV時代になるとは思えません。

「やっぱりね」
「ほら見たことか」

後出しジャンケンのようで心苦しいのですが、僕らの周りは同意見多数でしたね。

欧州でも完全EV化には慎重の姿勢

政府が期待するようにBEVが普及したら、高速道路のサービスエリアなどに、100基規模の急速充電器が必要だと試算されていましたし、そのためには化石燃料発電を活性化させる、あるいは原発を増やさなければ賄えないとの話もありました。

そもそも急速充電に30分が必要であり、夏や冬の遠距離ドライブはストレスですね。BEV化を否定する気はありませんし、実際に僕は内燃機関だけではなくBEVも所有しています。BEVにもメリットはあるとは思います。ですが、当面は内燃機関と電気モーターを合体させたハイブリッドが現実的です。計画どおりのBEV化は不可能であることは、肌感覚でも想像できることでした。

だというのに、日産の船頭は「ハイブリッドが急速に伸びるのを読めていなかった」と……。

個人的には日産は好きなメーカーです。クルマへの愛情は並々ならぬものがあります。他メーカーが手を出せない「GT-R」や「フェアレディZ」を生産し続けてくれています。少々不器用なところがありますが、愛すべきメーカーです。ですが、この度のBEV化は拙速しすぎましたね。

僕はレースに参戦するためにドイツを訪れますが、彼の地のメーカーはしたたか。ドイツ国民もドイツ政府が発表したような電動化は達成できないと予想していたようです。いずれ政府も前言撤回すると予想していました。政府の強引な電動化宣言は、撤回前提での打ち上げ花火だと覚悟していたのです。

ですから、ドイツの自動車メーカーも、内燃機関の開発は続けていましたし、過剰なBEVシフトはしませんでしたね。したたかなのです。VWを除けば……。

もっとも、日産には技術的なバックボーンがありますし、いずれ復活してくれると信じています。ただしそのためには、庶民感覚に敏感な経営者が必要なのかもしれませんね。

すべて表示
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 木下隆之(KINOSHITA Takayuki)
  • 1960年5月5日生まれ。明治学院大学経済学部卒業。体育会自動車部主将。日本学生チャンピオン。出版社編集部勤務後にレーシングドライバー、シャーナリストに転身。日産、トヨタ、三菱のメーカー契約。全日本、欧州のレースでシリーズチャンピオンを獲得。スーパー耐久史上最多勝利数記録を更新中。伝統的なニュルブルクリンク24時間レースには日本人最多出場、最速タイム、最高位を保持。2018年はブランパンGTアジアシリーズに参戦。シリーズチャンピオン獲得。レクサスブランドアドバイザー。現在はトーヨータイヤのアンバサダーに就任。レース活動と並行して、積極的にマスコミへの出演、執筆活動をこなす。テレビ出演の他、自動車雑誌および一般男性誌に多数執筆。数誌に連載レギュラーページを持つ。日本カーオブザイヤー選考委員。日本モータージャーナリスト協会所属。日本ボートオブザイヤー選考委員。
著者一覧 >

 

 

 

 

 

 

 

RECOMMEND

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

 

 

 

 

 

 

 

人気記事ランキング

MEDIA CONTENTS

WEB CONTENTS

AMW SPECIAL CONTENTS