これから価値が見出される1台になる?
2024年6月27日、アイコニック・オークショネアーズがオンラインで開催した「TIMED AUCTION 2024」において2022年式トヨタ「GR86」が出品されました。2022年10月28日にイギリスで初登録され、イグニッションレッドのボディに光沢のあるブラックのホイールが映える個体でした。
日本車への注目度が高いアイコニック・オークショネアーズ
イギリスのアイコニック・オークショネアーズは、かつてはシルバーストーン・オークションとして知られていた、自動車専門のオークション・ハウスだ。アイコニック・オークショネアーズへと社名を変更したのは2023年8月とまだ最近のことだが、すでにその存在は世界のカーマニアやオートモビリア(自動車に関連する趣味の対象物)のコレクター、あるいは投資家から高く支持されている。
同社のオークションにおけるユニークで多彩な出品リストはつねに熱い視線を集める存在となり、現在ではフェラーリ・オーナーズ・クラブ・オブ・ブリテンやジャガー・エンスージアスト・クラブ、ポルシェ・クラブGBなど、多数のオーナーズクラブから、ブランド専用オークションの開催を依頼されている。
また彼らは同時に、シルバーストーン・フェスティバルやNECクラシック・モーターショー、レースレトロなど、ヨーロッパを代表するモータースポーツやクラシックカー関連のイベントでは、独占オークション権をも保有しているのだ。
同社のオークションでは、日本車の存在もつねに大きな話題となる。その直接のきっかけとなったのは、昨2023年に1998年式のスバル「インプレッサ STi 22B」の、3台しか存在しないプロトタイプのうちの1台。故コリン・マクレーによって所有されていたモデルを、インプレッサとしては史上最高額に相当する48万500ポンド(邦貨換算約8900万円)で落札に導いたことだろう。それ以来アイコニック・オークショネアーズの開催するオークションでは、日本車への注目度が大きく高まり、それが落札価格を高騰させる直接の理由となってきたのだった。
まだまだ新車に近い1台
今回紹介するのは、「ジューン・オンライン・タイムド・オークション」に出品された、トヨタ「GR86」。86としてはセカンド・ジェネレーションにあたるこのモデルは2021年4月(日本仕様)に発表され、同年6月にはイギリスで開催されたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードでも公開されている。
すでに「GRスープラ」、「GRヤリス」を誕生させていたトヨタにとって、このGR86はまさにスポーツモデルの中核を担うプロダクト。それだけに、そのメカニズムには大幅な改良が加えられていた。排気量を2.4Lに拡大した水平対向4気筒エンジンなどは、その象徴的な例といえる。
最高出力235psを実現したエンジンの強化に対応して、プラットフォームやサスペンションにも徹底的な強化が図られている。シャシー剛性は50%も向上し、さらに見た目だけではなく内部構造にも多くの変更が加えられている。結果GR86は、0-96km/h加速で5.4秒、最高速では224km/hという運動性能を得ることに成功したのだ。このパフォーマンスは、正真正銘スポーツカーのそれであると評してもよいだろう。
出品車は2022年10月28日にイギリスで初登録された、イグニッションレッドのボディに光沢のあるブラックのホイールが映えるモデルだ。インテリアはブラックでトリミングされ、アルミニウムカラーのハイライトが施されたカラーリングが印象的。ペダル類はクラシックなドリルドペダルで、ステアリングホイールやシフトレバーの操作感もじつに素晴らしい。さりげなくあしらわれたGRバッジを見れば、ドライバーはつねにそれが特別なスポーツカーであることを感じることができるだろう。
現在までの走行距離はわずかに4000km未満。アイコニック・オークショネアーズは、このGR86に2万5000ポンド~3万ポンド(邦貨換算約509万円~609万円)のガイド・プライス(推定落札価格)を掲げたが、残念ながら今回のオークションでは落札者は現れなかった。その価値が認められるのは、まだまだこれからということなのだろうか。