乗り込んで撮影することができた!
さて、宮内庁がこのクルマをドイツ本国に戻すにあたり、菊のご紋はフェイクが用いられ、花弁の数が異なるという話を聞いたことがあるが、何度行っても花弁の数など数えたことがない。残念ながら写真でも確認する術はないからわからない。
そして、1998年になって、とある取材で再びこのダイムラー・ベンツ・ミュージアムを訪れ、いつも通り(もう何度訪れたかわからないので)天皇御料車に対面してきた。この時は博物館が休館日だったこともあり、ダイムラーのお目付け役が同行していたのだが、その時に限ってなぜか、「室内の写真を撮ることは可能か?」と聞いてみると、「OK」と言って、いとも簡単にリアドアを開けてくれて、めでたく玉座と対面した。
じつはその撮った写真がどうしても見つからず、極めて残念である。中を見るだけでもすごいことだったのに、なぜかその時はついでとばかり、「乗っても大丈夫か?」と聞くと、これもあっさりとOK。それがここに紹介する写真である。一緒に同行した編集者と御料車の後部座席に収まってしまった。
私の座る側にはリモコンのようなものが置いてあり、そこには「右に曲がれ」、「左に曲がれ」、「もっとゆっくり」、「もっと速く」などと書かれたボタンがあり、恐らくはドライバーズシートにその情報を飛ばす仕組みになっているのだと思う。天皇陛下御自身がそうした操作をやるとは思えないので、私が座った側は本当の玉座ではないらしいので少し気が楽である。
きっと今は開くことはないであろうリアドアである。今から30年近く前はまだベンツもおおらかだったのか、あるいは日本人の天皇陛下に対する思いが理解できなかったのか、いずれにせよもう2度とない体験であった。
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