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96年前のル・マンで優勝したベントレーが東京を走った!「コッパ・ディ東京」に降臨した「オールド・マザー・ガン」とは?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: AMW 竹内耕太(TAKEUCHI Kota)

満場のギャラリーを魅了した往年のル・マン優勝車

今回の「第18回コッパ・ディ東京」に姿を見せたオールド・マザー・ガンでは、頑丈なソフトトップ(当時のル・マンのレギュレーションは、最初のピットストップまでは幌を上げて走行することを規定していた)に、光量確保のため片方だけ鉄製メッシュカバーを取り付けられた大径ヘッドライト。あるいは、空気抵抗軽減のためガラスの代わりに金網が張られたウインドスクリーンや、フロア後半を覆う巨大なアンダーカバーなど、1920年代当時のル・マン用ベントレーならではの特徴が、緻密な時代考証の結果として完全再現されている。

くわえて、4 1/2 Litreではラジエターグリルのデザインが大きく改変されたのだが、依然として頭頂部の丸い「3 Litre」用のグリルを備えるという、現役当時のオールド・マザー・ガン固有のディテールも見られるなど、はるか約1世紀前のル・マン24時間レースの雰囲気をぷんぷんと漂わせていた。

そして朝9時30分に、いよいよスタートセレモニーが開始。ゼッケン16のオールド・マザー・ガンは、汐留西公園の周辺をぎっしり埋め尽くした観衆に見送られつつ、直列4気筒SOHC 16バルブ・4398ccエンジンの発する異次元的に野太い排気音を残し、真っ赤なゲートをくぐって出発してゆく。

そののち、皇居前から上野公園や神田明神、浅草雷門、柳橋、西麻布、国会議事堂前などの東京らしい景勝地を通過し、お昼すぎに今いちどギャラリーたちの待ち受ける汐留イタリア街へと戻り、堂々のゴールとなった。

そしてすべての日程を終えたのち、オールド・マザー・ガン現在の住処である「M&K WAKUIくるま道楽」へと無事帰還。走行距離こそ決して長くはないものの、渋滞や込み入った路地もある東京の街を、この生粋のヴィンテージ・レーシングマシンとともに走った涌井氏は、ややお疲れの様子が窺えつつも、とても満足げな様子だった。

いっぽう、この日コ・ドライバーとして助手席に乗った元ベントレーモーターズジャパンの名物広報マン、横倉 典さんは「コッパ・ディ東京」体験を終えて、以下のようなコメントを寄せた。

「コッパ・ディ東京は、クラシックカーラリーの中でも希少性の高いクルマが多く参加していると聞いておりましたが、まさしくその通りで良い勉強になりました。100台以上のクラシックカーが東京の観光名所を巡るラリーでしたが、きっと東京の景色が少し変わったのではないでしょうか」

そしてオールド・マザー・ガンについても、とても感慨深げに語ってくれた。

「今回乗せていただいた、97年前に製造されたベントレー4 1/2 Litreは力強く、堅牢で現代の交通環境の中でもイキイキと走る姿が印象的でした。当時のドライバーであったウルフ・バーナートの挑戦の一部を時と場所を超えて共有できたような、不思議な感覚を味わえました。また、創業者W.O.ベントレーの“良いクルマ、速いクルマ、クラス最高のクルマを作る”という哲学を身体で感じることができる、幸せな時間でもありました」

晩秋の東京を駆け抜けた歴史的なベントレーは、イベント会場に詰めかけたギャラリーや愛好家、あるいはベントレーに造詣の深いコニサー(通人)まで魅了するような、まさに特別な存在だったのであろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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