レストア済みのカレラRSが登場!
2024年7月22日~24日にRMサザビーズがドイツ・バイエルンアルプスで開催したオークションにおいて、ポルシェ「911 カレラRS」が出品されました。まるで新車のようなエクステリアは、2023年にレストアを受けており、内燃機関もコンディション抜群の1台でした。
85%が新設計だった964型911
サード・ジェネレーションのポルシェ「911」というよりも、911のファンにとってはそのコードネームである964型ポルシェ911と紹介した方が、分かりやすいのかもしれない。1989年から生産が開始された964型911は、すでに市場で絶対的な人気を博していた911シリーズを、さらに進化させるために誕生したモデル。一見ボディパネルの一部を変更しただけのようにも見える964型だが、そのエンジニアリングは徹底しており、ポルシェによれば全部品のじつに85%は新設計によるものだった。
出品車は1992年に2276台のみが生産されたと記録される、軽量高性能版の「911 カレラRS」。ボディカラーはこちらもポルシェ・ファンの間には鮮烈な記憶として残る、鮮やかなルビー・ストーン・レッド。実車は2023年にレストアを受けており、そのコンディションは新車同様のコンディションに復活したほか、ロールケージ、フルハーネス・シートベルト、消火器などの新たなエクイップメントも装備されることになった。ちなみにこのレストアの過程を撮影した写真も、実車に添付して販売されるということだ。
ベース車のカレラ2よりも120キロダイエット
さて、964型911の中でも人気の高い911 カレラRSについて、もう少し解説を加えておくことにしよう。911 カレラRSと聞いて思い出すのは、1973年に誕生した911 カレラRS 2.7ということになるのだろうが、この964型世代のカレラRSもそのコンセプトはまったく変わらない。直接的な関係を持つモデルは、カレラ・カップに投入されたレーシングカーで、それと同様にエンジンの強化と軽量化、サスペンションの強化などのメニューを施したモデルがカレラRSの概要になる。
カレラRSの生産は、まずカレラ2のボディをさらに補強することから始まった。そしてリアシートやエアコン、パワーステアリング、オーディオなどの装備を廃止し、逆にインテリアトリムやシート、エンジンフード等は軽量化され、それらの作業によって重量はベースのカレラ2からマイナス120kgとなる、1230kgの数字を達成していたのだ。いつの時代もスポーツカーの性能向上には軽量化は第一の手段であることが理解できる。
走行距離は8万7340キロ
ちなみに911 カレラRSには通常のシートを2脚のレカロ製シートに変更した「ベーシック」と、前述した快適装備を残した「コンフォート」の両仕様が存在するが、前で触れた車重はもちろん前者のデータであることは当然だ。
リアに搭載されるエンジンは、「M64」型と呼ばれる3600ccの水平対向6気筒DOHCに変更され、最高出力はカレラ2と比較してプラス10psの260ps仕様へと、わずかながらに強化されている。組み合わされるトランスミッションはもちろん5速MT。車高はカレラ2よりもさらに40mm低い設定となり、トーションバーに代わるコイルスプリング式サスペンションとの相乗効果で、そのコーナリングは一気に現代的なフィールを感じるものになった。軽量化されたフライホイール、リミテッドスリップ・ディファレンシャル、マグネシウム合金製ホイールの採用も見逃せない。
RMサザビーズが1992年式ポルシェ 911 カレラRSに設定したエスティメート(推定落札価格)は30万ユーロ~35万ユーロ(邦貨換算約5016万円〜5852万円)。これまでの走行距離は8万7340kmとオドメーターに刻まれているが、前に触れたレストアによって、そのコンディションは非常に良い状態に保たれている。
このオークションには多くの注目が集まったものの、残念ながら今回は最低落札価格を上回る入札者は現れなかった。とはいえ964型911時代のカレラRSが、貴重なモデルであることに変わりはない。オークション・シーンから届く、今後の情報に期待したいところである。