ヒュンダイの発展を支えた韓国のベストセラー車
あまたのモデルが存在するクルマの世界にもまだまだ深遠な世界が残っていて、いわゆる珍車、激レアカーはまさしく深海魚のような存在。お隣、韓国がかつて生産していた乗用車の中にも、知る人ぞ知るとっておきの1台があります。それが今回ご紹介する、ヒュンダイ(現代自動車/2020年以降の日本語表記はヒョンデ)の「エクセル」です。
デザインはジウジアーロでメカニズムは三菱 ミラージュ
日本ではあまり知られていないことだが、韓国最大手の自動車メーカーであるヒュンダイ(現ヒョンデ)が世界的に有名な工業デザイナーのジョルジェット・ジウジアーロ(イタルデザイン)にオーダーして完成したクルマの第1弾は、1975年にデビューした「ポニー」というモデルであった。1982年にはフェイスリフト版の「ポニー2」も登場している。
ヒュンダイ「エクセル」は、このポニーの後継モデルとして1985年にリリースされ、韓国では当初「ポニーエクセル」と名乗っていた。韓国初の前輪駆動乗用車となったエクセルのボディタイプは5ドアハッチバックで、後に「プレスト」と呼ばれた4ドアセダンと、「エクセル スポーティ」という車名の3ドアハッチバックが追加設定された。
いずれもメカニズムは三菱「ミラージュ」をベースとし、1.3Lまたはと1.5Lエンジンを搭載。これは三菱製のオリオンエンジンであった。
韓国自動車史上初の海外進出成功作
ヒュンダイは1986年にエクセル/プレストで初めてアメリカ市場に進出し、北米ではセダン/ハッチバックともエクセルというモデル名で統一して販売した。以前にもポニーなどが海外進出を果たしたことがあったが、それほど売れなかったので、エクセル/プレストが韓国自動車史上初の海外進出成功作となった。
マイカーブームが到来していた韓国においてもエクセル/プレストは人気モデルとなり、多くのユーザーが愛用。ハッチバックよりもセダンのほうがたくさん売れたので、1989年に登場した2代目エクセルはセダンが基本モデルとなった。
日本でも150台だけ三菱オートプラザで正規販売
東京・町田の「スウィンギンモータース」で発見したのは、1988年に開催されたソウルオリンピックのときに三菱商事が150台限定で輸入したうちの1台で、三菱オートプラザ店にて販売された正規ディーラー車だ。
どうやら日本では諸般の事情でエクセルという車名を使えなかったようで、「ヒュンダイ 1.5 XL」というのが国内での正式名称となる。XL=エクセルということだろう。ソウルオリンピック開催記念車なので、1988年式だ。総走行距離は5万kmで、まさかのワンオーナー。奇跡のサバイバーなのだ。
外観のディテールをよく見るとジウジアーロっぽさが満載。中身は日本車という韓国車だが、アメリカ市場のことも気にしていたのでどことなく北米車っぽさもあるという、無国籍感が魅力となっている。熱心なジウジアーロ・マニアはもちろん、ちょっと外したオシャレなクルマを探している若者にも刺さりそうな、ユニークさなら天下一品のクルマといえるだろう。