172台が生産されたうち13台が右ハンドルだった
911 GT2はまた、本格的なサーキット走行に適合させるため、ボディやシャシーなどにも特別なチューニングが施されたモデルだった。大型のフロントエアダムとリアスポイラーによってダウンフォースはさらに増大し、ワイドで戦闘的なホイールアーチとリアウイングの組み合わせによって、エンジンの冷却性能も向上させている。
軽量化ももちろんこのGT2では重要な開発テーマのひとつで、「911 ターボ」に使用されるAWDトランスミッションを搭載していないため、それだけでまず約300kgの軽量化を実現。さらにアルミニウム製ボディパネルや軽量レーシングシートの採用、防音材やリアシートなど多くの内装品の削除によっても、さらなる軽量化が果たされている。結果得られた車重は1295kgと、これもまた驚くべき数字だ。
ポルシェの記録によれば、1993年から1998年までの間に生産された993型の911 GT2はトータルで172台(ロードカー)。そのうち13台は右ハンドル仕様となっている。
走行距離は3万4010キロ
今回グッドウッド フェスティバル オブ スピード オークションに出品された993型911 GT2は、1995年9月28日に新車として日本でデリバリーされたモデル。日本には17台の同モデルが正規輸入されているが、ポルシェからのファイルに保管されている生産証明書には、このモデルが日本仕様の左ハンドル車として生産され、ポーラーシルバーメタリックの外装色にダークグレーのレザーインレイ付きブラックレザーバケットシートを装備して販売されたことが記録されている。
GT1にも使用されファンの間では非常に人気の高いスポーツステアリングホイールも新車時から装着されていたアイテムだ。1997年3月の走行距離3714kmから、2024年6月の走行距離3万4010kmまで、合計27回のサービス記録がすべて残されているのも大きな魅力といえる。
日本からこの911 GT2がイギリスへと持ち込まれたのは2020年2月のこと。それ以来、2020年のル・マン・クラシックへ参加するなど、さまざまなイベントに姿を現すことも多かったモデルだけに、そのコンディションが良好であることは間違いないのだろう。993型911 GT2が市場に出回る機会はごく限られたもの。今回のオークション・リザルトは、次回の大きな参考になるに違いない。