第1回 伊勢崎オートモービルフェスタでX1/9を発見
2024年6月2日に群馬県伊勢崎市にある伊勢崎市オートレース場駐車場で実施された「第1回 伊勢崎オートモービルフェスタ」は、自動車趣味人が多い群馬だからこそ行うことができた催し。スーパーカーから国産車まで多彩なクルマが集まりました。今回は、フィアット「X1/9」のオーナーのリアルな声をお届けします。
半世紀にわたって所有
趣味車が大挙して集まるイベントに行くと、新車からワンオーナーで大切にされてきたクラシックカーと出合うことがある。今回取材した1974年式のフィアット「X1/9」も、“hirodent”さん(74歳)が半世紀にわたって1人で所有してきたクルマだ。
「初期登録は1974年7月9日でした。当時X1/9は新車価格が189万円だったと記憶しています。といっても自分で購入したわけではありません。私の名義で父親に買ってもらいました。弟が通っていた高校の通学路にロイヤルモータースの販売代理店があり、そこのショールームに白いX1/9が飾ってあったので、ねだりにねだって買ってもらったのです」
“hirodent”さんは20代前半のときにイタリア本国にあるフィアット・ショールーム内に飾られていたX1/9を遠くから見て欲しくなり、その想いを成就させたのだ。
スーパーカー全盛期にはガレージに子どもたちが襲来
“hirodent”さんがリトラクタブルヘッドライトを持つX1/9のオーナーになった頃から、子どもたちの間でスーパーカーブームとなったので、全盛期には自宅のガレージにカメラ小僧が襲来し、エンブレムを剥がそうとする者までいたらしい。
「買ってから1年ぐらいは、街中を走っているときに振り返ってくれる人が多かったですね。しかし、良いことばかりではありませんでした。イタリア車は、故障、雨漏り、錆が常識だとは知らずに購入してしまったからです」
壮絶なクルマ昔話とは
どうやら、アイドリングが安定しなかったり、コーナリング中にグイ~ンときつく曲がるとエンジンストールしたり、キャブレターのスロージェットにゴミが詰まったりしていたらしい。あるときは坂道で駐車する際にサイドブレーキが利かなくなり、ギアを1速に入れてハンドルを左いっぱいに回しておいたこともあったという。
ほかにも、左片輪を縁石に乗りあげて駐車して運転席を降り、ドアをバタンと閉めたらバシャッという音とともにドアガラスが粉々に砕け散った話や、アクセルを踏んだら根元から折れたこと、夜中にアクセルワイヤーが切れてしまい、暗闇での修理が不可能なのでチョークをアクセル代わりに使って走ったこと、フロントにあるラジエターホースが外れてクーラントが噴出した……といった壮絶なエピソードも披露してくれた。
「父が元気だった頃、高速道路がまだ青森まで完成していなかったときに八戸までツーリングに行ったことがありました。父は長距離を走ってもX1/9のシートが疲れないことにビックリしていました。この頃は軽快に走っていましたね。本当に毎日乗りたい相棒でした。
その後、だんだん調子が悪くなってきてしまい、遠乗りして故障するとお金もかかるし苦労するので、家の近くだけを走っていました。ナンバープレートを返納したくなかったので、1年車検になっていて大変でしたが通していました。しかし、通すだけの作業をやってもらっていたので、調子が悪くなってもそのままになってしまい……これが乗れなくなった原因だと思います」
21年ぶりの路上復帰を果たす
X1/9が長い眠りにつく前の最終車検は1988年7月14日とのことで、その後、“hirodent”さんは20年にわたって愛車を動かすことはなかった。
「いつかまた自分で直して乗ってやろうと思っていたので、2007年にインターネットを検索していたらX1/9のクラブが存在することを知りました。そこにメールで連絡し、アドバイスをもらったり、サポートしてもらったりして、自力復活へ向けての作業をスタートさせました。
すべて直したので、路上復帰まで2年かかりました。1人での作業は限界がありましたので、最終的にはプロにお世話になり、2009年7月30日に車検を通すことができました」
せっかく保ってきたオリジナルの状態を今後もキープしていきたいと話してくれたので、50年前に輸入されたディテールが色濃く残っているこの貴重な個体を、機会があったらぜひ見てほしい。
>>>2023年にAMWで紹介されたクルマを1冊にまとめた「AMW car life snap 2023-2024」はこちら(外部サイト)