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E28「5シリーズ」にE34「M5」のエンジンを換装! 多くのBMW専門誌で紹介されたサーキットスペシャルの実際の価値はおいくら?

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Iconic Auctioneers

やはり確かな出自は、マーケットでは高値の必須条件となる……?

この夏、アイコニック・オークショネアーズ社の「Silverstone」オークションに出品されたE28系レーシングM5仕様車は、英国「Classic Touring Car Racing Club」主催のクラシック・ツーリングカーレース選手権「クラシック・サンダー・カーズ」の「トップA2(3601cc以上)」クラスのレギュレーションに準拠してモディファイされたもの。

E34系M5後期型からコンバートした「BMW M」社製S38型エンジンとギアボックスが搭載され、カスタムメイドのステンレススチール製エキゾーストシステムにくわえて、アップグレードされたエンジンマネージメントシステムにより、6900rpmのレッドライン近辺で発生する出力は360bhpに達するものと思われる。
また「EBCオレンジスタッフ」パッドを装着した750iL用ブレーキが減速を担当し、エンジン底部に設けられたアキュサンプ式オイルリザーバーがサージを防ぐ。

そしてエクステリアでは、この時代のドイツにおけるレースシーンを象徴するスポンサーカラー「イェーガーマイスター(Jägermeister)」のリバリーが、このクルマの本質を完璧に表現するとともに、視覚的にも魅力的なものとなっている。

いっぽうインテリアではマルチポイント式のロールケージ、アルカンターラ・フロック仕上げのカスタムダッシュパネル、「DigiDash 2」ディスプレイ、MOMO社製ステアリングホイール、6点式TRSハーネスつきの英「コルビュー」製バケットシートなどが、ともすれば即興的になりがちなレーシングカーとしては例外的に良好なフィニッシュで仕上げられている。

流札となったのはサーキット専用車が影響した?

オークション出品に際して添付されたヒストリーファイルには、ビルドフォト、長年にわたる請求書、1994年から2009年まで「D758 SGK」として公道走行していた時代の全MoT車検証、このクルマが掲載されたすべての雑誌も含まれている。

アイコニック・オークショネアーズ社のオークション公式ウェブカタログ内では「細部まで丁寧に仕上げられたこの1987年式BMW E28 M5は美しく走り、多くの権威あるモータースポーツ・イベントに参加することができ、再び競争する準備が整っている」と謳いつつ、3万8000ポンド(約750万円)~4万5000ポンド(約890万円)という、その出自を思えばかなり高めともいえそうなエスティメート(推定落札価格)を設定した。

ところが2024年8月23日に行われた競売では、売り手側が設定した「リザーヴ(最低落札価格)」には届かなかったようで、残念ながら「No Sale(流札)」に終わってしまった。

たしかに、これだけのチューニング内容とそれに投じた費用を考慮すれば、上記のエスティメートも理解できなくはないものの、やはり純正のM5ではなく、あくまで520iをベースとした改造車であること。そして、サーキットレース専用車両であることも合わせて考えるとマーケットは明らかに狭く、今回のオークションにおけるバイヤーのなかにはその条件を呑むことのできるうえに、懐の充分に暖かい愛好家がいなかった……、ということなのだろう。

>>BMWの専門誌「BMW LIFE2」はこちら(外部サイト)

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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