明日、日本カー・オブ・ザ・イヤーの発表です
2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤーの最終選考会を明日に控え、31台のノミネートの中から選ばれた10台の「10ベストカー」を改めて紹介します。今回の最終選考会と表彰式は、12月5日(木)にボッシュ株式会社本社にて行われます。横浜市営地下鉄センター北駅からほど近い場所に竣工した新社屋で、今年5月から業務を開始、敷地内には都筑区民文化センターが併設されており、区民の憩いの場ともなっている注目のスポットです。会場エントランスエリアには10ベストカーが実車展示されているので、自由に見ることができます。それでは、10ベストカーを編集長西山が解説します。
本命がない? いえいえそんなことはありません
今回は本命なき10ベストカーとも囁かれていますが、だからこそバラエティに富んだ車種が10台揃いました。そして本命なき……ということは、どのクルマが「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞するのか分からないということでもあり、裏を返せば、どのクルマも今年を代表する良きクルマであるということです。ということで、実際にドライブしたことのあるクルマから10台を紹介します。
三菱トライトン
商業車なのに……と思った方もいるでしょう。しかし、ピックアップトラックは北米では極めてあたりまえの普通車です。ヴェンダース監督の映画『パリ、テキサス』でも、主人公トラヴィスが買ってきた中古車はピックアップトラックだったし、そのクルマを見て息子がガッツポーズで喜ぶシーンがありました。ようやく日本でもピックアップが昨今のアウトドアブームでライフスタイルの一部として認知されてきたということでしょうか。AMWでは、嶋田智之さんに日常使いのインプレッションを書いて頂いています。
トライトンを数日乗ってみて感じたことは、「自分の中に変化が生まれる」ということです。海より断然山派の私ですが、海に行ってみたい欲求が芽生えていたのです。トライトンに限らず、たとえばベントレー「ミュルザンヌ」とか、「ボディが大きすぎない?」なんてことを聞かれますが、クルマの大きさは私に限ってはすぐに慣れます、というか、大きいクルマに乗っている方が、都心で走っているときは実は楽だったりします。前述のミュルザンヌ然り、レンジローバー然り。何より周りが自分が運転しているクルマを認識してくれているので、圧倒的に軽自動車などで走るよりストレスフリーなのです。さらに大きくてアイポイントの高いクルマは、周囲の道路状況を把握しやすいですし。ということでトライトン、なにもアウトドアだけでなくアーバンライフで乗ってこそ、粋というものです。都心で夜撮していたら、会社帰りのサラリーマン何人かに声をかけられました。「カッコいいっすね! なんていうクルマですか?」と。もう、これがすべてを語っていますよね。
MINI クーパー
MINIだけどミニじゃない、と言われたのはBMW MINIになってからのことですが、そんなことを今さら口に出すような人もいなくなるほどに、BMW MINIは歴史を重ねて、もはやオールドミニより馴染みのある人が多くなった感があります。個人的に選ぶなら断然3ドア。サイドから見たバランスは、3ドアのほうが美しいのです。インテリアも、ここまでオリジナルを再解釈してデザインされていると、むしろ潔くて「よくやった」と賛辞を贈りたい。何を隠そう、オールドミニのオーナーだった私がそう思うのですから間違いありません。
さらに突っ込んだ話をすると、BEVを個人的には推します。たしか2010年頃に試乗した「MINI E」は、実証実験用だったと記憶していますが、お台場近辺を試乗したのでした。その時に感じたのは、試作車の粗さ。奇しくも同じステージで最新のBEV版MINI COOPERを試乗したのですが、全く別物でゴーカートフィーリングを楽しめたのでした。このあたり、最近試乗したBMW「i5 M60」でも思ったのですが、極めてガソリン車に近い感覚の再現力には感心させられます。MINI COOPERを愛する人は、その走り味も含めて──というか、そのフィーリングに魅せられている人がほとんど。ファンを裏切らないのがMINI、ですよね。
トヨタ ランドクルーザー250
さて、ここからは運転したことがないので、あくまでも走っている姿を見ての感想であることをご了承ください。
丸目と角目の2パターンで発表されたのには、デザイナーの強い意志ではなく製品として消費者を取りこぼさないという企業の強い意志を感じ取れました。AE86だって「レビン」と「トレノ」というヘッドライトの異なる2台を同時に販売していたトヨタですから、この手法はなにも新しいものではなく、トヨタとしては常套手段といっていいでしょう。AMWでも読者アンケートでどちらのフェイスが好きかを調査しましたが、発表当時は丸目の方が若干ながら人気が高かったですね。ただし、街中を走る姿を見るようになると、その意見も変わってくるでしょうから、今後、どっちに人気が集まるのか注目しておきたいと思います。
マツダ CX-80
日本市場でこのサイズのSUVを出してくれるということが素直に嬉しく感じた1台。BMW「X5」やランドローバー「ディスカバリー」のような、リアに重厚感を持たせているデザイン──つまり、クーペスタイルではないという点もいいですね。写真で見る限りなのですが、インテリアのデザインなど高級感が溢れていて、ディーゼルで394万3500円、プラグインハイブリッドでも639万1000円からというのは、バリューありすぎです。AMWでは橋本洋平さんがファーストインプレッションを書いています。
レクサスLBX
レクサスブランドで「ヤリスクロス」ベースのクルマってどうなの? と思うことなかれ。レクサスの名に恥じないようにトレッドも広げられています。このあたりはチーフデザイナーである袴田浩昭さんに島崎七生人さんがインタビューしていますので、近々詳しい記事を配信いたします。
ヒョンデ アイオニック5
大胆なデザインで、公道を走る姿は新規感溢れていて、好感度の高い1台です。オーナー向けにエクスクルーシブなサーキット試乗会を開くなど、ブランディングの再構築にも余念がないヒョンデですが、こちらに関しては近々、太田哲也さんにAMWにて語ってもらいます。
ボルボ EX30
はじめて自ら運転した輸入車は、実はボルボ「240」でした。大学のクラスメートの父親(しかも通っている大学の教授)のクルマでしたが、シートのデザインなどに衝撃を受けました。それ以来、ボルボは最初にデザインでヤラれちゃうクルマが多かったように思います。それはこのEX30でも同じ。テールライトの処理など、ひと目でボルボであることがわかるデザインでありながら、新しい。まさにこの手があったか、という感じです。インテリアもミニマムな構成で無駄な加飾がない点に北欧のデザインの確かさが伝わってきます。AMWでは山崎元裕さんに都内で試乗していただいています。
BYD シール
AMWでは萩原文博さんの大阪までの1000km試乗で紹介しています。これまでBEVの広報車を数日借りて試乗することを避けてきた私ですが、その試乗記を読んで、ついにBEVを借りて1週間ともに過ごそうと思わせてくれたのが、このシールの試乗記です(1週間試乗したクルマはBMW i5 M60でしたが……)。はじめてBEVを購入する人にとって、シールの航続可能距離、そして528万円という車両価格は、非常に魅力的であります。
スズキ フロンクス
一時期頻繁に取材で訪れていたイタリア。ミラノやトリノといった大都市はもちろん、ボローニャという小さな街で見かけるスズキのクルマは不思議と街並みに溶け込んでいて、思わずシャッターを切ったのを覚えています。そのクルマというのは「イグニス」であったり、初代「エスクード」であったり……。このフロンクスもきっとイタリアの街がよく似合うんだろうなぁ……と、特にリア周りを眺めながら思ったのでした。
ホンダ フリード
発売されて間もない頃、きっと広報車かディーラーの試乗車だったと思うのですが、はじめて一般道で見たときの印象は忘れられません。クルマとは不思議なもので、公道で走る姿を見慣れてしまうともはや視界に入っても気にもとめなくなる一方で、はじめて見たときに抱いた感情はいつまでも忘れることはありません。フリードに関して言えば、それは極めてポジティブな印象でした。実車を発表会会場やショールーム、はたまたモーターショーなどで見たことがあったとしても、公道で走る姿を見るとまったく異なる印象を受けます。これは風景にまだ溶け込んでいないということに他なりませんが、ホンダらしいスリークなデザインでありながら、なによりイカツイ顔面から優しい面立ちに変わっていたことが大きく影響しているようです。丸目にしなくともヘッドライトの処理で、こんなに人と街に寄りそうデザインになるんだなぁ、と感心したものです。威圧感のないフリードが街中にあふれるといいですね。AMWでは橋本洋平さんに試乗していただいています。パパさん必読の試乗記です。