EU加盟国すべてのエリアでGR86やBRZなどの新車販売が終了
ドイツ在住で、欧州のモータースポーツ取材を中心に活動している池ノ内みどりさんのレポートによると、EU加盟国すべてのエリアで、2024年の夏にトヨタ「GR86」やスバル「BRZ」などの新車販売が終了してしまったとのこと。ドイツでも「手が届くスポーツカー」として、販売台数は多くはないものの熱心なファンが多いクルマだっただけにショックな出来事。その理由などについてレポートします。
ドイツ市場ではスイフトスポーツも販売終了
2024年の夏には個性的にカスタムされた日本車などが集結した、アジア車のイベント「Reisbrennen(ライスブレンネン)」に取材へ伺ったのですが、日頃見たことのないようなトヨタ「GT86」(先代「86」の欧州名)や「GR86」、スバル「BRZ」を目にしました。200名以上のオーナーらのコミュニティがあったり、仲間と一緒に参加して週末のドライブをしたりとオーナーコミュニティがしっかりとあって、愛車を通して楽しい仲間と繋がっているそうです。
ドイツの自動車雑誌では昨今の自動車新車価格の大高騰の中でも「手が届くスポーツカー」としてGR86やBRZは何度も取り上げられていました。日本もそうですが、ドイツメーカーもコンパクトクーペやカブリオレはどんどん製造終了となり、現行モデルのスポーツカーといえば高級車ばかりです。そんな中で、GR86やBRZは若者たちもコツコツと仕事を頑張ったならばなんとか手が届く価格帯とあり、販売台数は多くはありませんが熱心なファンが多いスポーツカーでした。しかし……。
GR86とBRZはEU加盟国すべてにおいて、この夏頃から新車販売が終了しているのです。欲しいと思っても在庫車か中古車しか手に入りません。ドイツに住む日本人としては、結構ショックな出来事のひとつでもありました。じつは、ほかにもスズキ「スイフトスポーツ」や複数の日本車も同様にドイツ市場からひっそりとさよならしていたのです。その理由はEUの安全規格基準の厳格化にあり、それに対応するための高額な設備投資や検査費用の捻出を断念し、販売を終了したようです。
ドイツ人ジャーナリストもお気に入り
友人のミヒャエルは有名な『Auto Motor und Sport』に所属するドイツ人ジャーナリストで、日々多くの量販車のテストドライブをしています。モータースポーツの取材の現場でも一緒になるのですが、彼の愛車は86! 自身でもニュルブルクリンク耐久シリーズやBMW M2カップに参戦しているアマチュアドライバーだけに、愛車に対しても人一倍のこだわりがあります。
最初はGT86を新車で購入し、ニュル仕様にするために日夜コツコツと足まわりを中心にチューンアップ。休日にはニュルのパブリック走行枠で存分に86で走り回っていました。ところが結婚式やハネムーン、一軒家の購入で、愛車のGT86を泣く泣く売却。ヒョンデ車を毎日のアシとして使っていましたが、やはり86の楽しさが忘れられずGT86を新車で購入した次第。
納車された2カ月後にEUでの販売終了告知を知り、心から購入して良かったとのこと。ニュルを走るために足まわりは少しイジっていますが、もう手に入らない車両とあり、極力オリジナルの状態を保って大切にしているそうです。ミヒャエルは、
「こんなにサイコーなクルマはない! ローンをムリなく組める価格だし、何よりも走って楽しい!」
と言うではありませんか。彼はドイツ人ですが、ドイツ車には興味がないそうです(笑)。彼は以前に黄色いスイフトスポーツに乗っていたこともありました。
ドイツでは日本国内で販売されているようなバラエティ豊かなモデルラインアップはなく、非常に限られたモデルしか販売されていませんので、私の友人らは日本に行くとそのモデルの多さ(とくに軽自動車)にとても驚いています。各国で販売されているモデルを見ると、その国のカーライフがなんとなく見えてきて楽しいですよね。