ストリートロッドとトラックが多かった2つのルート66博物館
世界の自動車博物館を巡ることをライフワークとしている原田 了氏。2024年夏の旅では北米の自動車博物館を取材することができました。レポート第3弾は、「ルート66自動車博物館」と「ニューメキシコ・ルート66博物館」をご紹介。今回はどんなクルマと出会えたのでしょうか。早速お伝えします。
ルート66は全長4000キロ近いアメリカの母なる道
ペンスキー・レーシング博物館などを取材した翌々日、7月26日に訪れたのが、ともにニューメキシコ州にある「ルート66自動車博物館(Route 66 Car Museum)」と「ニューメキシコ・ルート66博物館(New Mexico Route 66 Museum)」だ。
両館のネーミングに共通する「ルート66」だが、じつはルート66を名乗る博物館は他にもいくつかあって実際に今回のツアーでも8月1日にはミズーリ州にある「ルート66自動車博物館(Route 66 Car Museum)」にも訪れているのだが、共通するルート66が気になるところ。そこで博物館紹介の前にルート66を解説しておこう。
シカゴとロサンゼルスのサンタモニカを結ぶ大動脈
ルート66は、アメリカ最初の国道で、イリノイ州のシカゴと、カリフォルニア州はロサンゼルスのサンタモニカを結ぶ約4000kmの大動脈。1926年に制定され、西部の発展に大きく寄与していた。
1985年に州間高速道路システムが整備され、一部がその中に組み込まれたことでその役目を終えている。ちなみに現在ではバージニア州のフロントロイヤルとワシントンD.C.を結ぶ米国州間連絡道(Interstate Highway)に66号線(I-66)の名が付けられている(編集部注:1990年代からルート66復活運動が盛んになり、現在は「ヒストリック・ルート66」として再び地図へ記載され、当時のルートをほぼ全て辿ることが可能)。
現在のインターステート・ハイウェイは基本的に南北方向の路線に奇数番号が与えられ、シアトルとロサンゼルスを結ぶ5号線(I-5)から北米東海岸のメイン州ホールトンとフロリダ半島南端を結ぶ95号線などが有名だ。一方、東西方向の路線には偶数番号が与えられ南から順に番号が大きくなる。つまりここでいうルート66は、日本国内で例えるなら旧五街道の東海道といったところだろう。東海道をベースに国道1号線が整備され、やがて全国に国道が整備されていったのと同様だ。
ただしルート66の場合は、これを題材にしたリズム&ブルースやTVドラマのヒットにより定着して大衆文化を生み出している。ジョン・スタインベックの小説『怒りの葡萄』で、オクラホマから追い出され希望を求めてカリフォルニアに主人公が辿っていったルート66を作者は「マザーロード」と呼び、多くの共感を集めている。そして2006年に発表された映画『カーズ』でもルート66が舞台となっていたのは記憶に新しい。
現地に行くとインターネットでは見つけられない博物館を見つけられる
さて、話を戻して博物館の紹介に移ろう。この日最初に訪れたのはルート66博物館。ツアーのスケジュールを考えながらインターネットで検索を続けていたところ高い塔の上に黄色にペイントされたクラシックカーを載せた広告塔が目印で、たまたま予約していたモーテルがすぐ近くで、朝一番から出かけてエントランスの前で開館時間を待った記憶がある。
ここの営業時間は朝7時半からで1時間半ほどで取材を終え、もうひとつのルート66博物館、ニューメキシコ・ルート66博物館に向かう。ルート66博物館からの距離は57マイル(約91km)足らずで1時間弱ほど走って到着。こちらは展示車両も多くなく1時間ほどで取材終了となった。
その後訪ねた至近距離にある「トゥクムカリ歴史博物館」は、クルマの展示がないということでパスし、どこか近くに自動車博物館はないか尋ねると、高速道路を走っていくとクルマを展示してあるサービスエリアがある、とのこと。それでは、とI-40を東に進むこと30分余り。「トラッカー・パーキング – ラッセル・トラベルセンター(Trucker Parking -Russells Travel Center)」というサービスエリアを発見した。
日本の高速道路にあるサービスエリアとは違い、たとえて言うなら名阪国道のインターチェンジにあるガソリンスタンド併設のコンビニ、といったところ。ただしここにある自動車博物館は見応えがあった。見学は無料でスペースの割に展示車両の台数が多いから押し込んだ感は拭えないが、おすすめの博物館だ。インターネットで検索しているだけでは発見しにくいが、現地に行ってみるとこうした博物館を発見できる。
サイズのデカいトラックが多数展示
それはさておき博物館だ。ルート66を名乗る2つの博物館だが、ルート66博物館の方は、戦前を名乗る2車は近年のキットカーやストリートロッドで、展示車両は事実上、全て戦後モデルだった。一方のニューメキシコ・ルート66博物館の方は、1915年式のビュイックや1930年前後のフォードに加えてフューエル・タンカー(ガソリン輸送車)や、これは戦後モデルとなるのだがメール・トラック(郵便車)などが展示されていたが、やはり大多数は戦後モデルとなっていた。そんな中、2つの博物館に共通していたのはストリートロッドとトラックが多かったこと。
ストリートロッドというのは1949年以前に生産されたトラックや乗用車をカスタマイズしたクルマで、エンジンのスワップやローダウン、さらには全高を低めたチョップドルーフなどの改造を施して完成させたもの。戦前に生産されたものとは思えないほど美麗な出で立ちも大きな特徴となっている。
一方のトラックは、日本国内で走っている「ハイラックス」や「ダットサントラック」のようなものだが、やはりサイズがデカいのが特徴。基準モデルでも全長は5mを超えていて、なかには6mを超えるような巨大なモデルもある。これを日常使いしているのだから、やはりアメリカはデカい、ということだろう。両館は60マイル(約96km)足らずの距離を1日で回るには十分だった。