ウニモグが群馬の老舗醤油工房のシンボルに
今回の主役となるウニモグは、1978年式の「406」。天保三年(1832年)創業という群馬県安中市の老舗醤油店「有田屋」のシンボル的な存在である。
同社の7代目当主である湯浅康毅氏は、1970年代中盤のスーパーカーブームに胸ときめかせた、少年時代からのクルマ好き。彼が憧れを募らせてきたクルマの中には、ウニモグもあったのだが、老舗を受け継いだばかりのころには、もちろんそんな個人的な憧れなどは封印せざるを得なかったそうだ。
状況が大きく変わったのは、2008年ごろのこと。それまで社内で行っていた配送業務の外注化を図り、代わりに地域イベントなどでも人目を惹きそうな面白いトラックを導入することになったのだ。そこで思い浮かんだのが、少年時代から憧れだったというウニモグ。
そんな折、趣味性の強いクルマを専門に扱う中古車紹介サイトにて、現在の愛車であるウニモグを発見。ついに入手に至ったという。
ところが、当初の予定では配送には使わないはずだったのが、予想以上に知名度が上がってしまったことから、「ウニモグに会いたい」という古くからのお得意様が続出。くわえて送迎などにも活用され、今では「2シーターのベンツでお迎えに上がります」という定番ジョークとともに、ゲストたちを驚かせているとのことである。
巨大なボディに乗り込むだけでひと苦労
湯浅さんと筆者は10年来の知己であり、彼のウニモグは幾度か見せていただく機会もあったのだが、じつは助手席に乗ったことすらなかった。そこで今回は、オーナーとしてこのクルマと15年以上の時を過ごしてきた湯浅さんに助手席へと乗っていただき、レクチャーを受けながらの初テストドライブに挑むことにしたのだ。
とはいえ、一般的な乗用車のルーフ上に、小型トラックの車体をもうひとつ乗せたくらいの高さのあるウニモグである。乗り込むにはアクロバティックな体勢を余儀なくされる。
まずはステップに右足を乗せ、ヨイショっとよじ登って左足を運転席に滑り込ませる。そして、もう一度身を捻ってなんとかシートに腰を降ろすと、キャビン内は巨大なエンジンカバーに占められるものの、なかなか快適な着座姿勢が得られる。
エンジンやトランスミッションは、暖まるまで操作がガチガチに固くて非常に大変だそうだが、ひとたび暖まれば絶妙になめらかになるとのこと。今回は試乗に先立ってオーナーさんがしっかり暖気しておいてくださったため、今いちど燃料ポンプのレバーを回し、次にイグニッションキー横の始動ボタンを押すと、直列6気筒5677ccのディーゼルエンジンは「ブルンッ」と一発でかかる。
そして、期待と不安が半々という心境のまま、ついにショートドライブのときがやってきたのだ。