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「ナナサンカレラ」に右ハンがあった! 新車当時から一組の夫婦によって維持されてきた個体は約9000万円で落札されました

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TEXT: 武田公実(TAKEDA Hiromi)  PHOTO: Bonhams

やはりツーリングとライトウェイトには歴然とした相場価格差がある……?

ものの本によると、ポルシェ911カレラRS2.7の生産数1580台の内訳は「ツーリング」が1324台、「スポーツ」が200台、そして「レーシング」が56台とされている。

このほど、ボナムズ「Goodwood Revival Collectors’ Motor Cars and Automobilia 2024」オークションに出品されたポルシェ911カレラRS2.7は、「M472」ツーリング仕様のオリジナル右ハンドル車。オリジナルの外装色は現在と同じ「バイア・レッド(Bahia Red)」で、今なおシャシーとエンジン番号が一致する、いわゆる「マッチングナンバー」の1台である。

この「C16」モデルコードのRS2.7は、1973年6月7日、ロンドンのブロンプトン・ロードにある「モーターチューン・リミテッド」社によって、英国オックスフォードシャーのリトル・ハセリーに住むジョン・パトリック・ヘイワード氏のもとへ新車として納車。現オーナーの亡き夫は、1976年5月にこのポルシェを手に入れた。

現状での走行距離は6万8800マイルと記録されており、オリジナルでは珍しくエナメル製ボンネットバッジのオレンジ色が残っている。

最大のトピックは、これまでのヒストリーがサービス履歴として仔細に残っていること。1974年2月19日にモーターチューンで1万1565マイル、1976年以降の3年間は、4万1200マイルに至るまで「ハソップ・モーター・カンパニー」、1985年以降は「AFN」社で点検を受けたことが記録されている。

また1998年には「モト・テクニック」によってベアメタル状態までペイントをはがされて再塗装。くわえて1998年から1999年にかけて、エンジンは「ウィンスロウ・モーターサービス」社によってリビルトされたいっぽう、ギアボックスは2002年に「JZ マクテック」社によってリビルトされた。

記録簿も多数残っている

さらに手書きのメモによると、近年では2014年9月、6万6000マイル時の2018年2月、6万7900マイル時の2021年11月にオイル交換されたことが記録されている。また2021年、6万7779マイルで新品のディスクとブレーキパッドが装着され、軽い点検整備を受けた。2022年には新しい「ピレリ・チントゥラート」タイヤが装着されている。

1976年から現在までの走行距離を証明するMoT証明書、エンジンとギアボックスのリビルドに関する重要な請求書、Moto Techniqueによるボディワークの修復と再塗装に関する請求書と写真、AFNからの多数の部品、2022年までの諸請求書とともに提供される。

今回のオークション出品にあたってボナムズ社の営業部門は「カレラRSレジスターに登録されているこの美しい個体は、故人の熱狂的なオーナーによって、その生涯のほとんどを通して大切にされてきたものであり、じっくりと検証する価値のあるものです」という宣伝文を添えて、40万ポンド~50万ポンド(約7520万円〜9400万円)という、ナナサンカレラRSツーリングとしては現状のマーケット相場に即したエスティメート(推定落札価格)を設定していた。

そして「グッドウッド・リバイバル」の1週間前、9月7日にグッドウッド・サーキット内で行われた競売では、エスティメートの想定内に収まる47万1500ポンド。現在の為替レートで日本円に換算すれば、約8862万円で競売人のハンマーが鳴らされることになった。

ちなみに、この3週間ほど前に行われたRMサザビーズ「Monterey 2024」オークションでは、同じカレラRS2.7でもより市場価値の高い「スポーツ(ライトウェイト)」が出品されたばかり。落札には至らなかったものの、100万ドル(約1億5000万円)~150万ドル(約2億2400万円)というエスティメートが設定されていた。

これは、ポルシェ911カレラRS2.7が依然として高値安定であること。そして「ツーリング」と「スポーツ」には、歴然とした相場価格差があることを示しているといえるだろう。

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  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 武田公実(TAKEDA Hiromi)
  • 1967年生まれ。かつてロールス・ロイス/ベントレー、フェラーリの日本総代理店だったコーンズ&カンパニー・リミテッド(現コーンズ・モーターズ)で営業・広報を務めたのちイタリアに渡る。帰国後は旧ブガッティ社日本事務所、都内のクラシックカー専門店などでの勤務を経て、2001年以降は自動車ライターおよび翻訳者として活動中。また「東京コンクール・デレガンス」「浅間ヒルクライム」などの自動車イベントでも立ち上げの段階から関与したほか、自動車博物館「ワクイミュージアム(埼玉県加須市)」では2008年の開館からキュレーションを担当している。
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