故・川上 完さんの愛車として有名な個体
いっぽう、今回筆者が乗ったブリストル 406は、今をさること10年前、2014年に67歳の若さで逝去された自動車評論家、故・川上 完さんの愛車として、これまで国内の自動車メディアにも数多く登場してきたことから、一部のファンの間では有名な個体。クルマだけではなく航空機のマニアでもあった川上さんはスバル「360」や三菱「ジープ」、サーブ「96」など出自を航空機にさかのぼることのできる自動車メーカーの創ったクルマたちにこだわり、その集大成となる1台として406を入手されたという。
そんな逸話を持つこの個体は、かつて熱心なファンたちに愛されてきた「完さん」とともに、国内各地のイベントにも参加されていたことをご記憶の方も多いことだろう。
現在この406は、亡き完さんのご遺族から託されるかたちでブリストル研究所が保有しているが、この日は同研究所の涌井代表がベントレー「4 1/2 Litre」、通称「オールド・マザー・ガン」で出場することになっていたため、筆者にドライバーのお鉢が回ってきた。
個性的なブリストルに、沿道のギャラリーも興味津々
2024年11月23日のイベント当日、ゼッケン26番をつけた我々のブリストル 406は、まだ20歳代前半の若さながら、スーパーカー/クラシックカーのディーラーとして世界を股にかけて活躍している友人、近藤裕大君にコ・ドライバーとなってもらい、満場の観衆の声援を受けながらスタートすることになった。
東京の街に繰り出した筆者たちの406のブリストル自社製ストレートシックスと、即席「ブリストル・チーム」のもう1台、ゼッケン27番の410が発するクライスラーV8による「二重奏」を東京の街に響かせながらのドライブは、時おりの渋滞に巻き込まれつつも快調至極なもの。
また、いささか特異なスタイルのブリストルは、この日エントリーした109台のなかでも目立つ存在だったようで、たとえば行く先々の信号待ちでは沿道のギャラリーから「これ、なんてクルマですか?」、あるいは汐留イタリア街のスタート/ゴール会場では「完さんのブリストルですね」などと声を掛けられることもひんぱんにあり、ちょっと照れくさくも楽しい休日を過ごすことができたのである。